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木造建築の展開
(2008年8月5日 09:00)

伝統木造建築の輝かしい歴史があるにもかかわらず、RC造や鉄骨造のめざましい発展に比べて新しい木造建築の展開は遅々としたものであった。建築教育において、木構造は建築史における歴史的伝統木造建築であり建築材料学における木材料に限られていた。新しい木造建築を教えることができる建築教育者と建築家が少なく、木造建築の可能性が置き去りにされてきた。 

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木は燃える材料、ということで延焼の可能性のある部位には不燃材料が用いられてきた。そして木の強度と剛性は鉄骨や鉄筋コンクリートに比較して劣るという考えが新しい木造建築の進展を遮ってきた。設計規準は新しい木造建築の進展を助けるものではなかった。そして、昭和初期に定められた壁量の規定は、新しい木構造の設計の道を極めて狭いものにしてしまった。

そうした中で、唯一枠組壁建築が木造在来工法を駆逐するような勢いで普及してきた。それは、昭和49年に枠組壁建築の技術基準(告示1019号)が制定されたこと、この構法が壁式構造なので建築基準法の壁量の規定に合致したこと、そして生産システムの合理化がなされたからである。建築大工とは異なるフレーマーと呼ばれる枠組壁建築専門の職種が誕生した。

一方この20年の間に木造建築の研究と見直しが急速に進んだ。大断面木材は火災に対して耐火時間が長いこと、そして木材の比強度(圧縮強度を比重で割った値)が大きく、木材はコンクリートの約10倍、そして鉄の約2倍あることから木材はコンクリートや鉄に比較して決して劣る材料ではないことが理解されるようになったこと、そして木質構造の研究が進展して安全性確保の技術が蓄積されてきたことがある。また、構造用集成材(厚さ2~5cmの挽材<ラミナ>を貼りあわせた部材)を用いた木造建築に新しい展開が見られた。これは集成材に関する品質、規格、接合法、耐火性能といった基礎研究の進展と昭和62年の建築基準法の改正及び技術基準の整備、そして集成材の集成技術と生産システム及び加工技術の進展がその背景にある。さらにヘビーテインバーと呼ばれる大断面部材(最小寸法15cm、断面積300平方cm以上)による大空間建築の様々な提案が可能になった。火災の燃焼によって大断面部材は急に耐力を失うことなくある時間強度を保持できることが確認されたからである。そこで燃え代計算の考え方が導入され、火災による断面欠損が建物の崩壊に至らないことを計算で確認すれば(短期の設計基準)大断面部材によりロングスパンの木造建築も設計できるようになった。

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長さ方向の接合(フィンガージョイント)
構造用集成材は写真のフィンガージョイントによって要素同志が接着される。
接着面積が広く接合強度が高い。

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厚さ方向の積層(ラミナ数6枚の例)
単版を厚さ方向に積層することで大断面部材(ヘビーテインバー)が造れる。

ラミナを集成した構造用集成材と共にLVL(Laminated Veneer Lumber)という、1~3mmの薄板を貼りあわせた集成材なども構造材に使用できるようになった。これまで木構造と呼ばれていた用語も多様な木質部材の開発と実用化に対応させるために木質構造という名前が使われるようになった。

木質構造を構築するためには部材相互の接合が設計の要点になる。伝統木造建築を除き、接合部には金物を併用することが多い。さらにロングスパンの構造では鋼棒による張弦材を用いたハイブリッド型の部材構成を必要とする場合もある。異種材料との組み合わせは、木材だけでは実現できない新しい構造形式の建物を可能にする。また、近代的な集成材工場の整備と品質管理の向上、流通、安定供給、そして経済性など、新しい木質構造の生産供給システムが整備されてきた。

木材は資源循環型の唯一の材料であり日本は豊富な蓄積量を誇っている。しかし建築材料だけでなく木質製品のための木材は北米や東南アジアあるいはアフリカから輸入され利用されてきた。戦後植樹された日本の人工林は利用できるまでに成長してきたが輸入木材の価格に比較して割高なため多くは利用されずにいる。人工林で成熟した木は伐採して積極的に利用することが重要である.成木の光合成能力は若木に比較すると低い。伐採された後地には若木を植えて育てれば光合成が活発になり環境改善に貢献する。

近年、環境との共生、そして木造建築や木質製品への愛着など木への関心は確実に高まってきた。そして全国各地で地場産の木を建築に利用する動きが活発になっている。後の回で紹介する三河材流通加工センターも国産木材の流通を活発にするために計画された施設であり、地元産の木材の集積、流通、加工、仕上げまでを行う13棟から成る総合施設である。

木造建築は従来中小規模の建築に限られていたが、近年はロングスパンの建築にも積極的に利用されている。木材による大規模建築の構築法は東大寺大仏殿をはじめとして日本の伝統建築では古くからある技術であるが、新しい木質大規模建は構造学力学的な解析技術によってこれまでにない新しい構造形式を可能にする。その形式を大別すると、建物に作用する力を部材や構造の持つ強さで荷重を制圧する大断面部材集成材(ヘビーテインバー)による架構形式、鋼材など木材以外の材料を併用したハイブリッド型の構築システムで外力に抵抗させる架構形式、あるいは小断面の挽材を組み合わせて構築する架構形式などがある。そして構造材料としては各種の構造用集成材や中小断面の挽材の他に各種の構造用木質板、あるいは木質繊維板も盛んに用いられるようになった。(つづく)

中部大学工学部教授 片岡靖夫

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