グッドニュース・ジャパン : 銀座と里山・奥山を結ぶ「生態系」 ― ファーム・エイド銀座2008

5月3日(祝・土)、東京都中央区の銀座紙パルプ会館で開かれた、「都市・里山・奥山を結ぶサスシティナブルネットワークフェスタ『ファーム・エイド銀座2008』」に行ってきました。
トークショー、シンポジウム、ワークショップ、物産直売、児童絵画展、音楽ライブや餅つき・似顔絵コーナー、映画の製作発表と多彩なプログラムを通じて、さまざまな立場の人たちが、持続可能な社会を創るために必要な都市と地方を結ぶ新しいネットワークのあり方を考えた一日。都会も生態系の一部であり、都会に住む私たちも自然環境を守ることに積極的に関われるということを実感しました。

主催したのは、2006年から銀座で養蜂業による地域活性化を図るNPO法人、その名も「銀座ミツバチプロジェクト」です。1日40万人もの人で賑わう消費の街、銀座はもともと職人の街でもありました。「消費だけでなく、銀座で採れたもので、銀座の特産品を作る技術を生み出そう」と「銀座食学塾」と「銀座の街研究会」の有志が中心となり、ビルの屋上に養蜂箱を置き、ミツバチを飼育しています。「半径200メートルの地産地消」の実現をめざし、昨年は国内生産の約0.1%にあたる150キロの蜜が採れました。採れた蜜は、銀座のお店で販売されるカステラやケーキ、カクテル、ローソクなどになって、銀座を訪れる人たちを楽しませています。

都市も生態系の一部 なぜ、銀座でこんなに蜜が取れるのでしょうか? 実は今、都心では公園や市街地が整備され、花が増えているのです。とりわけ銀座は、すぐそばに皇居の豊かな緑があります。ミツバチを通じ自然の豊かさへの感謝とともに、生態系への関心が生まれてきたことから、「『人と自然との共生』について、銀座から世界にメッセージを発信!」と銘打った今回のイベント開催となったのです。

自然林が都市の生活を支える銀ばちフォーラムでは、「奥山」を代表して、日本熊森協会会長・森山まり子さんが「いま、森で起こっていること」と題する基調講演を行いました。森山さんは元・理科教師。子どもたちの「駆除されるツキノワグマを助けたい」の声で活動を始めたそうです。緑豊かな自然林と整然とした人工林、都会で暮らす私にはどちらも美しい森の風景に見えますが、雨水の吸収量が少なく地面に緑の育たない人工林は「緑の砂漠」とも呼ばれています。こうした現状が森の餌となる植物や生物をなくし、熊を人里に追いやって害獣にしてしまうのです。森山さんたちは森を買い取り、自然林に戻すための「100万人プロジェクト」を推進中。「熊が安心して住める自然林を復活させることが、安心して農業ができる環境をつくる」と森山さんは語りました。

都市の住人が農業を支える 続いて「里山」を代表して、NPO法人メダカの学校理事長・中村陽子さんが、田んぼでの活動を紹介しました。農薬を使うことを止め、冬も水を張ったままにした田んぼには、たくさんの生き物が住むようになります。たとえばイトミミズは土を豊かにするだけでなく、表面を覆って雑草を生えにくくするという役割も果たします。中村さん自身は農業をされているわけではありません。無農薬栽培を実践する心ある農家を支える応援団として、「美味しくて安全なお米を作り続けてもらうために、買う人、食べる人を増やす」活動を続けられており、お話の後も、生産農家の1つ、茨城県茂木にある棚田へ向かいました。

映画「降りてゆく生き方」主演の武田鉄矢さんも特別イベント「映画づくりはまちづくり」では、映画「降りていく生き方」製作発表会が開かれました。この映画で武田鉄矢さんは、田舎町で農業を営む団塊世代の役を演じる。あいさつでは「大量生産、大量消費を生きてきて、今の社会を考えれば考えるほど、このまま進んでいっていいのかと思う。その答が映画の中にあるのでは。『降りる』ことはマイナスに捉えられがちだが、果たして『上る』ことがそんなに素晴らしいのか。上っているときは頂上しか見えない。また、登山は下山して初めて完成する。目指すところは実は裾野にあり、豊かさは降りていく時に実感できるのではないか」と語りました。撮影は5月15日から新潟で始まります。

子どもと地域と地球をつなぐ「学校の森」武田さんと言えば「金八先生」。教頭になって直接教壇に立てなくなったと落ち込む金八が「森をつくった校長」という1冊を手にして元気を取り戻すというシーンがありました。著者の山之内義一郎さんは、学校の敷地内に、生徒と先生、PTA、地域の人々が一緒になって一本一本苗木を植え自然の森を作る活動を行なってきました。この実践思想を参考に韓国では「学校の森」が国民運動にまで発展し、すでに600校で展開されていますが、肝心の日本ではそれほど広がっていません。そこで、山之内さんは、NPO法人学校の森を立ち上げ、学校の森づくりのボランティア養成し、普及を図っています。

(市谷ライヤ)

●「学校の森づくり」ボランティア養成講座小さな森が生み出す、驚きの教育効果。子どもたちが地域につながる学校起こし。日時/2008年5月18日(日)12:50~会場/ぽっぽ町田(町田市原町田4-10-20)申込み・問い合わせ/ kaiin@gaku-mori.jp FAX.042-729-3198