和LOHAS海外レポート~『フィンランドで見つけたロハス』(3)

エコ住宅を訪ねて―後編

今回もエコシティプロジェクトによる実験的エコ都市住宅、ヴィーキの暮らしをご紹介します。

ヴィーキの住宅は、ほぼ半分が個人所有、残り半分が賃貸で、さまざまな形態の住宅がありますが、こちらは少し例外のお宅です。

こちらは、街づくりに関わった建築家が、色々なアイデアを出しているうちに自分の家も作りたくなり建てた家なのだとか。そしてこの壁、泥とワラで作られているのです。化学物質を使用せず、室内の温度を一定に保つ効果があり、いずれ家を壊す時にも、土に還るという良いことずくめな素材ですが、フィンランドは元々ログハウスの文化の国だそうで、この技術は今回デンマークから学んだそうです。断熱効果を高めるため、壁の厚さはなんと60㎝もあります。この、断熱というのが、フィンランドでのエネルギー節約の大きなポイントになります。と言うのも、フィンランドは日本でいう北海道のような、冬はとても寒く夏はさわやかな気候です。しかも国民の約40%は夏により自然を感じて過ごすためのサマーハウスを所有しているので、夏の暑さ対策はあまり必要が無く、いかに冬の暖房を効率よくするかにかかっているのですね。ヴィーキのすべての住宅で、断熱材が建設当時の規定量の5割増使用されています。(やがて法律が改正され、当時の5割増が現在の規定になったようです。)窓やドアも最低2重で、3重のことも珍しくはありません。熱を多くとりいれる事ができる南側の窓が大きく、北側と東側の窓は小さく作ってあるのも工夫の一つです。

写真の手前は、生ゴミを肥料に変えるコンポストですが、右奥の高床式の小屋。これは収納スペースです。暖める必要のない物は家の外に置くことも、暖房エネルギーの節約なのです。

街のあちこちには、井戸のような物が見つかります。

ここには雨水が貯めてあり、車を洗ったり、畑の水やりに使うそうです。それぞれの家に小さな畑があり、少しでも自分たちの食べるものを育てられるように、という思いで、はじめは皆頑張っていたそうですが、今では野菜や花が育てられている畑は半分以下でした。フィンランドでは共働きの家庭が多く、忙しいので、というのがその理由のようです。なかなか理想通りにはいかないものですよね。

さて、ヴィーキの住宅は子供がいる世帯が優先して入居できるため、幼稚園や小学校から大学まで揃っています。

今回見せてもらった幼稚園は、「環境に配慮した、子供たちのためのデイケアセンターの模範になること」を目標に作られた所で、朝から3時までは幼稚園、夕方からはユースハウスとして、小学生くらいの子供が遊ぶ場所になるそうです。幼稚園の庭は大きめの石や、割と背の低い樹木などで、わざと大人の目の届かない隠れ場所が作ってあり、子供たちはここで危険を学ぶそうです。私が気に入ったのは、こちらのお部屋です。

薄暗くて、きれいな色のカーテンがかかった部屋。天井には星のように小さな電球がついています。ここは、気持ちを落ちつけたり、ゆっくり読書をすることが出来る部屋で、先生に頼むと入れてもらえるそうです。「騒ぎたくない気分の子供だっているでしょう」と、案内してくれた女性の話。みんな一緒じゃなくてもいい、というのが新鮮に感じました。

ヴィーキの住宅で人々の生活がスタートして約7年。エネルギーの節約では成果を収めましたが、問題点も指摘され始めています。フィンランドでは日本と同様、三世代同居する家は少なくなっているので、特に分譲の家では、将来子供がいなくなり、一気に高齢化が進むのではないか、という心配。また、近くにはバスが通っていますが、地下鉄やトラムからは離れているのでどうしても車が必要になってしまう。これは環境に決して良いものではない、という意見。

しかし、街はそこに住む人々の生活と共に変化し、成長していくものです。

実際、この住宅に住めば自然とエネルギーが節約できるものではなく、そこに住む人々の意識によるものが大きい、と言われています。このエコシティプロジェクトが始まった当初予想されていたよりもはるかにたくさん、環境に高い関心をもつ市民が入居を希望して集まったそうです。街を作る人の「想い」と、そこに暮らす人の「想い」がロハスな生活を作っていると感じた、エコ住宅の訪問でした。

次回はヘルシンキに戻って、「精神的な健康」を養う秘訣、街にあふれる素敵なデザインを紹介します。

(次回は2008年8月24日掲載予定です。)

■筆者プロフィール

ほそがいふみ(パタンナー・アトリエみつまめ主宰)

アパレル会社でパタンナーとして、5年間勤務。在職中から手作りのよさを広めるべく、ハンドメイドの雑貨作りユニット『アトリエみつまめ』として活 動する。「手作りをもっと気軽に、もっと楽しく!」をコンセプトに製作した雑貨は、地元名古屋や岐阜のクラフト市などを中心に出店・販売している。また現在は、おしゃれママのはじめての手作りを応援をする、「縫いやすくて可愛いコドモ服の型紙」を製作中。ものづくりを通して物を大切にする心を、母親を通じ 子供たちへ伝えたいと活動中。

*アトリエみつまめブログ http://3mame.seesaa.net/

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