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和LOHASに暮らす知恵~「田園に生きる」―食事療法士・辻野将之
(2008年10月10日 09:00)

田園のある里山にはいろんな植物が育ち、いろんな虫がいて、いろんな鳥が来る。さらに田んぼは自然のダムとなり、様々な天災から守ってくれる役割も果たしている。自然を支配するのでなく、驚くほど上手に自然と共存しているのが日本の田園の特徴と言えるだろう。

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ところが現在、この日本の原風景である田園は、複雑な状況にさらされている。

戦後は農業技術の向上により、お米の生産量が飛躍的に増えた。しかし皮肉なことに食の多様化やパン食の普及などで消費量は下がっていく。農林水産省の統計によれば、昭和37年度は年間に1人当たり約118kgのお米を食べていたが、平成18年度にはなんと約58.2kgまで文字通り半減してしまった。最近は食自給率の低下が問題になっているが、お米だけは慢性的に過剰気味なのだ。

すると、国はお米の価格の暴落を避けるために価格の安定化を図ろうとする。生産制限の施策として有名なのが「減反政策(げんたんせいさく)」だ。これは、あの手この手で田んぼの作地面積を削ってお米の生産量を減らそうという一連の制度のことだが、個人的にいろいろと疑問を感じている。

水田は太陽と風と水に育てられた植物を中心に、昆虫や動物の生命が循環する流れを形作った小さな世界である。日本が世界に誇る「生物多様性」のお手本であり、天然のダムとしても活躍している水田を、わざわざ見捨てるというのはいかがなものだろうか。

農家にすれば、減反だから単純に一部の田んぼを放置すれば良いという問題ではない。水田は放置されると荒廃し、再び元の姿に戻すには大変な労力を要する。しかも、きちんと雑草などをケアしないと周りの水田にも悪影響が出てしまう。まさに百害あって一利なしだ。

しかし悲観的な話ばかりではない。最近は食品の安全性が注目されるようになり、脱サラして「量」より「質」の農作物づくりにチャレンジする人も出てくるようになった。

実際にやると、農作業は自然との闘いである。生活リズムもずいぶん改める必要があるだろう。一般的な農家は、朝は日の出と共に起きて作業。午前中に帰ってきて朝餉(あさげ)を食べ、日が高い間は休憩。再び活動し、17時ごろに夕餉(ゆうげ)。あとは日が沈み、暗くなったら眠る。というサイクルの繰り返しだ。

実はこの太陽を基準にした生活リズムは、東洋医学(おそらく生理学的にも)の観点からすると、とても理にかなっている。朝日を浴びて体内時計をリセットすることは規則正しい生活を維持するために重要だし、農作業をしている限りは運動不足になる心配もない。日本人は本来、昼餉(ひるげ)という言葉がないように1日2食であり、適度に胃腸の休息をとれていた。しかも自分で作った作物ならば、鮮度も抜群! 身土不二にかない、おいしくいただけるだろう。

日本人はお米を主食(食事全体の5/8はお米を中心とした穀物にする)とし、ピッタリくるよう身体を適応させてきた。私は食事療法士として、日本人が昔のように、主食をお米に戻すことで健康になり、日本の伝統食のすばらしさを再認識してもらえることを願い、行動している。国も本質的に食自給率を考えるなら、国民が米食に戻るような政策を期待したいものだ。

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欧米的な生活スタイルも悪くないと思う。しかしせめてこのコラムを読んでくださった皆さまは自分の目でいいお米を選び、毎日食べるようにしていただきたい。幸い、ブランド米と呼ばれる魚沼産コシヒカリでも、値段は茶碗一杯(1合=2杯と計算)あたり65円ほどだ。それがこだわりを持つ稲作農家を守り、日本の食自給率を守り、豊かで懐かしい田園風景を守ることにつながっていく。

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LOHAS(ロハス)は「Lifestyles Of Health And Sustainability」。自然環境と人間の健康を優先し、持続可能な社会を志すライフスタイルという意味である。そもそも日本の伝統的な生活様式は、長い時間をかけて改良されてきたLOHASそのものだった。

田園に生きること。これはまさに日本が生んだ「和ロハスの知恵」の結晶なのである。

*関連記事

和LOHASに暮らす知恵~vol.1「ごはんのある食卓」

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和LOHASに暮らす知恵~「おふくろの味」

■筆者プロフィール

辻野将之(つじのまさゆき)

株式会社SoRA代表取締役、食事療法士
所有資格:はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、調味料ジュニアマイスター

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東洋医学と食事療法の知識と実践を学び、日本の食事情を実見するため全国の食の生産者を訪ね歩いた経験を持つ。2006年には株式会社SoRAを創立。代表として、人と自然を健全に保つ日本文化の再建を志している。現在は「そら鍼灸食養治療院」のほか、宿泊型の生活習慣改善プログラム「森林養生」で治療活動に従事。限りなく海水に近い塩「うみたま」の販売、東洋医学を分かりやすく紹介するメールマガジン『70%健康マガジン』の配信もおこなっている。

※リンク

株式会社SoRA http://www.soragroup.jp/

そら鍼灸食養治療院 http://soragroup.jp/shinryo/index.html

森林養生 http://www.hoshinoya.com/plan/forest/index.html

うみたま http://www.umitama.net/

70%健康マガジン http://magazine.soragroup.jp/

コメント

  • いく - 2008年10月22日 15:36
    国の規制緩和も然ることながら 農家も「自分の土地」という執着を捨て、 若者にどんどん土地を解放していったらいいと思う。 志を持った若者は多い。 過疎化の問題にも少しは活路を見いだせると思うし、 不況、不況と憂いていないで、 「自分たちの食物は自分達で作る」という意識に転換していけばいい
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