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ドイツ・フライブルク市の気候保護(第4回)
(2008年9月28日 09:00)

エネルギーコンセプトの成立(再生可能エネルギーの推進、太陽光発電) 

 フライブルク市がエネルギーコンセプトとして、コージェネレーションを大々的に推進したことにより、市内で消費する電気エネルギーのおよそ半分を、市内で、高効率で自給自足できるようになったと前回はお伝えしました。

これ以外のエネルギーコンセプトの対策を見てみると、再生可能な自然エネルギー発電の拡張が挙げられます。1986年の「エネルギーコンセプト」では、マイクロ水力発電の活性化、太陽光発電の推進、そしてバイオマス発電の推進が挙げられていますが、80年代、90年代初期は、こうした分散型の再生可能エネルギー発電はパイロットプロジェクトとしてのものがほとんどで、面状に広がり、市内の電力の一部を担うような役割まではなされることがありませんでした。
しかしリオの地球サミットを経て、10年後の1996年に、エネルギー供給に関連する「気候保護コンセプト」が可決されると、フライブルク市の自然エネルギーの推進・活用は活性化されます。まず太陽光発電については、市の電力供給公社を介する形で、「優遇固定買取り制度(フィードインタリフ:FIT)」が1996年から開始されました。
 


フライブルク市の電力供給公社の行ったフィードインタリフ(出典:[Freiburger Solarenergie-Fuehrer], Stadt Freiburg, 1997 Freiburg)。

ドイツ連邦政府は1991年から「電力買取り法」によって再生可能エネルギーからの発電であれば、電力系統管理者に20年の間、優先的に決まった最低買取り価格で、そこから発電される電力すべてを買取ることを義務付けていますが、この価格は当時の平均的な電力価格の90%(=17.15ペニヒ/kWh)というものでした。従ってこの法律は、風が豊富な北ドイツにおいては風力発電の推進に大きく貢献しましたが、設置コストが割高な太陽光発電は、この価格では採算が取れず、推進とまではいきませんでした。日本のような助成制度のなかったドイツでは、太陽光発電は90年代ほとんど普及していなかったといえるでしょう。

しかし南ドイツのフライブルク市では、日射量が豊富で、市内には太陽光発電の大きな研究機関があり、それに関連する企業も存在したことから、これをまちづくりの柱とすることを決めています。ですから上述の図のような形で、電力消費量が大きい平日の日中は最大49.6ペニヒ/kWh(約30円)で太陽光発電からの電力を優先的に、割高で買取ることを行いました。同時に、役所や学校などの公共の建物においては、平屋根の屋上で大きく面積がとれる場所に、市民が太陽光発電装置を取りつけることができるように配慮しました。この2つの対策によって市民ソーラー発電所、つまり市民が資金を集め、大きな屋根の上に大型の太陽光発電装置を取り付け、そこから発電された電気は優先的に割高に買取られ、その売り上げを投資した金額に応じて市民が分け合うというプロジェクトが始まったのです。
 


サッカースタジアムの屋根の上に設置された市民ソーラー発電所。

現在ではフライブルク市の代名詞のような存在にもなったサッカースタジアムの屋根の上のソーラーをはじめ、いたるところでこの市民太陽光発電所、あるいは企業が出資した太陽光発電所が作られています。また、ソーラーを推進するパイロットプロジェクトと市民ソーラー発電所の普及に弾みをつけたのが2000年です。この年には2つの出来事が起こりました。1つはハノーヴァー万博の場外展示場としてフライブルク市の「ソーラーシティコンセプト」が採用されたため、ソーラー施設を観光や視察、教育や研究のための資源として活用するための整備が行われました。2000年の万博開催時には、以下のようなプロジェクトを視察することを可能にしたパンフレットやガイドブック、ツアーが提供されています。

 
フライブルク市の代表的なソーラープロジェクトの数々。図中の○点は2000年前後までに整備される予定、あるいはすでに整備された大型のソーラープロジェクト(出典:[Freiburger Solarenergie-Fuehrer], Stadt Freiburg, 1997 Freiburg)。

そしてもう1つは、ドイツ連邦による「電力買取り法」の改正です。これは、新たに「再生可能エネルギー促進法(EEG)」と呼ばれ、これまで一律に電力価格の90%であった固定買取り価格を、それぞれの再生可能エネルギーの発電源のコストに応じて、20年間の期間中に少なくとも投資した金額が2~2.5倍程度にリターンされるような固定買取り価格を設定したのです。
これによって太陽光発電からの電力は、ドイツ中どこでも施設の大きさによって54~57.4ユーロセント/kWh(約75円)で買取りされることが保証されました。これまでのフライブルク独自モデルでは、太陽光発電とは20年間で投資した分がようやく償却される程度のプロジェクトだったのですが、この法律によって10年前後で償却、残りの期間は利益を生み出す施設に変貌したのです。フライブルク市民がこぞって定期預金をソーラー投資に振り向けたことはいうまでもありません。
このような対策、①パイロットプロジェクトの推進→②自治体独自のソーラー優遇制度の確立と研究機関との提携によるモニタリング、実施状況の経験の蓄積→③国による推進という段階を経て、フライブルク市では、以下のようなカーブで太陽光発電の設置は上昇を続けています。
 

フライブルク市の太陽光発電設置量の推移(出典:http://www.solarregion.freiburg.de/

2008年8月27日には、フライブルク市内の太陽光発電設置量が10MWpを超えました。これは、面積にするとおよそ80,000㎡以上、サッカー場にして12面の面積です。このパネルで、21万人のフライブルク市民のうち、9,000人分の電力が供給されていることになります(フライブルク市の家庭での電力消費量は1人あたり約1,100kWh)。もちろん、家庭以外にも市内で大量に電力を消費しているため、これだけの太陽光発電施設を設置しても、市内の総電力消費量の1%超程度にしかなりません。しかし、すでに1,000件を超えるソーラープロジェクトが21万人の市民の力で推進されてきたことは特筆するべきでしょう。

ここ6年間でフライブルク市民は太陽光発電を400%増加させました。今はたかだか発電割合は1%でしかありませんが、しかしこの上昇カーブが指し示す将来は非常に明るいのです。

環境ジャーナリスト・村上敦

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