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コミュニティづくりが成功の鍵 - 葛巻町のバイオガス発電見学記
(2008年9月24日 09:00)

牧場を持ったら、まず、挑戦してみたいのが、バイオマスの新エネルギーによるエネルギーの自給、中でも有力候補のひとつがバイオマスガス発電です。処分に費用がかかる糞尿をエネルギーと肥料に変えるシステムという触れ込みだからです。本当でしょうか?岩手県に、バイオガスプラントの先進事例があると聞きつけ、その実力を確かめに、「葛巻町バイオガスプラント」と「土里夢農場バイオガスプラント」を訪ねました。

ここでは、主に牛の糞尿をメタン発酵設備に投入してバイオガスを発生させ、発電と熱回収できるバイオガスプラントを、それぞれ平成16年と平成17年に建設しています。

まず、前者の、くずまき高原牧場のバイオガスプラントは、葛巻町が運営。さっそく、葛巻役場の吉澤 晴之さんにご案内いただきました。このシステムでは、家畜の糞尿と生ゴミをブレンドして、メタン発酵槽でガスを発酵させ、タービンを回し、電力を得ます。ガスホルダーに貯まったガスでタービンを回すことで発電されます。メタンガスを発酵させるための糞尿および野菜などはかなりのボリュームですし、ガスは気体なので、ガスホルダーも巨大になります。向かって右側のメタン発酵槽でガスを創り、左側のガスホルダーに貯めます。私たちの大きさと比べてかなりの大きさであることがわかります。

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一方、発電するタービンは、ガスホルダーの巨大さと比べれば小型のものです。

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コンテナの中にユニットとして収められていました。

バイオガス発生量や発電能力は小さく、ここの牛舎のすべての電力をまかなうというよりは、一部をまかなう発電量なのだそうです。電力だけでは、こうした大がかりなプラント建設の投資額を回収できるほどの利益が出ないのが現実だそうです。

しかし、バイオガスプラントが、注目されているのは、「牛の糞尿の処理が主目的」であるとのこと。つまり、糞尿の野積みが禁止され、特に街に近い地域では、糞尿のにおいが嫌われ、気を配ったり処分したりするコストが大きい。それを、自分で電力に変えるという形でポジティブに処理できるというメリットがこうしたプラントにはあるそうです。

また、畜産廃棄物のバイオガスプラントでは、発酵設備から肥料分に関連する窒素、燐、カリウムなどが含まれる「消化液」と呼ばれる生成物が発生し、これを液肥としたり、固めて堆肥としたりすることができます。

ただし、「消化液」の供給量と、肥料の需要量がいつも同じとは限りません。肥料を散布する農用地が少なかったり、利用が進んでいなかったりすると供給過剰となり処分しなければならなくなります。そのため、「葛巻町バイオガスプラント」では廃水処理設備も設けられていて、消化液を散布せずに処理することもできるようになっていました。以下のシステム図パネルの右側。

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結局、処分するのでは、処分施設も必要になり、投資コストが嵩みます。

うまく受給バランスが調整できないものでしょうか?

作った液肥を無駄なく散布するコミュニティづくりに成功しているのが、「土里夢農場バイオガスプラント」でした。こちらは、NEDOと日本車輌製造株式会社の共同事業として、土里夢農場内に建てた実証実験プラントだそうです。土里夢農場は、近隣の酪農家が協力して有限会社化して共同で営む大型の農場です。今、岩手県でも、酪農家の担い手がどんどん減っているため、家族経営に限界が出て、会社化して大規模化と効率化を進めているのだそうです。この農場では、搾乳牛200頭を飼養しています。ここでは、本来の自然の姿に近づけるため、写真のように、フリーストールと呼ばれる牛舎を採用しており、牛が自由に動き回れます。

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さて、土里夢農場では、乳牛200頭から、出てくる糞尿が一日12立方メートル。

これに排水や排乳などを混ぜ、タンクで25日発酵させます。

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すると、メタンがおよそ57%のバイオガスが出てきます。これをガス炊きボイラでガスとして利用、あるいは発電機で牛舎に送電します。また、発電の際に発生する熱はお湯に変えて利用します。

一方、出てくる液肥は、大きな消化液貯留槽で貯めます。ここでは、最大半年分まで貯めることができるそうです。このサイズがあれば、需給バランスを取ることが出来ます。

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さらに、土里夢農場はこの液肥を、自社の牧草地やデントコーン(牛の飼料)の栽培に活用する他、近隣の農家と協力して、この液肥で野菜試験栽培をしています。農家は散布車を消化液貯留槽へ乗り付け、レタス畑に撒きます。

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農家にとっては、格安の肥料が手に入り、そして、有機野菜として高く出荷できるといいます。レタスは、生で食べることが多く、有機レタスはちょっとプレミアムがつきます。

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今回の取材に応じて下さった、日本車輌製造株式会社の吉田さん、河合さんによると、こうしたバイオマスプラントは、億の単位の投資額になるが、バイオマスの助成金を活用したり、地域のコミュニティづくりにつなげていったりすることで、堆肥の処分コストと比べて見合うようになってきているとのことでした。

以下の経済産業省のページには、土里夢農場でのこの試みの詳細が紹介されています。

http://www.maff.go.jp/tohoku/kihon/baio/top2/f_2007/pdf/6-2.pdf

この農場は、数ある、日本車輌社製のプラントの納入先の中でも成功事例のひとつだそうです。

 土里夢農場の代表の澤口社長によると、バイオガスプラントを導入して最も良かったことは、「徹底した環境対策を図っている次世代型の循環型エコ牧場」であるとして注目を浴びたことと語っています。それは、何より、暗い話題の多い、畜産家にとって明るい希望になるからだと言います。

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取材の空気感はこんな感じでした。

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以上の取材を通して、わかったことは、

1.バイオガスプラントは、単体そのものでは採算が難しい。
2.循環型農業コミュニティを全体として構想することで、互いにメリットが生まれる。
3. 「コミュニティ」の象徴としてバイオガス発電がある効果は大きい。

ということでした。

つまり、消費者へ向かうそれぞれの立場の生産者が欲しいモノを互いに融通し提供しあえるコミュニティがあり、「エコな牛乳」、「エコなレタス」と、消費者に伝えられるムーブメントにつながるそうした運動の起点として、バイオガスプラントが象徴的に存在することがこの農場の成功の秘訣だったのかもしれません。

(服部徹) 

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