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ドイツ・フライブルク市の気候保護(第3回)
(2008年8月20日 09:00)

エネルギーコンセプトの成立―コージェネの絶対的な推進

 今回は1986年に策定されたフライブルク市のエネルギーコンセプトの内容と取り組みについてお伝えします。このコンセプトでは〈絶対的な脱原発方針〉〈エネルギーの高効率化をはかるためのコージェネ推進〉〈省エネ推進〉〈再生可能なエネルギー推進〉を柱にしています。その中でもとりわけ積極的であったのが〈エネルギーの高効率化をはかるためのコージェネ推進〉です。コージェネと地域暖房を推進したからこそ、人口1人あたりで13%を超える温室効果ガスの削減がフライブルク市では達成されました。それでは、なぜ〈コージェネ〉が重要であるのかを説明しましょう。

現在の日本やドイツにおいて最もエネルギーを浪費している、言い換えればエネルギーを大量に廃棄している場所は、大型の発電所です。原子力や化石燃料をエネルギー源とする発電所では、その発電所におけるエネルギー効率は4割前後と言われています。この効率4割という数字を聞かれてもピンとこないかもしれませんね。

日本は、発電に用いられる原子力・化石燃料のほとんどは輸入に頼っています。この膨大にお金を払って輸入されたエネルギー量の3~4割は電気という形で私たちは利用していますが、残りの6~7割については、厄介なことに発電所で「熱」という形で発生します。ですから輸入した燃料の半分以上を熱として海に捨てているわけです。

発電所で発生する「電気」は遠くまで送電することができますが、「熱」は残念ながら遠距離を輸送することができません。人の住まないところ、つまり熱を大量に必要としないところに大型の発電所を設置している現状が、そのまま社会のエネルギー効率を大幅に下げることに繋がっているわけです。ですから、社会として大型の発電所からの電力に全面的に頼るのではなく、そのうちの一定割合を地域に分散させたコージェネという形で設置すると、社会全体のエネルギー効率はぐっと上昇します。コージェネとは、小型の発電機だと理解してください。発電の際には機械が熱くなり、熱が発生しますよね。その熱を大気や海に捨ててしまうのではなく、住居の暖房や給湯に利用してやろうというのです。コージェネの熱効率は8割以上と発電所のそれを大きく上回ります。

新興住宅地であるヴォーバン住宅地の地域暖房+コージェネ。ここでは、通常の天然ガス式のコージェネの代わりに、周辺の森から生産される「木質チップ」を燃料として活用している。これまで紙の原料にしかならず買い叩かれていた木質チップ(間伐材などの低級材木から生産)も、エネルギー源としてみられるようになったため、ある程度儲けの見込める事業となった。森を守る機能を持つ持続可能な林業のためにも、こうした木の活用は推進されねばならない。

ただし、通常、コージェネ施設は熱が必要なときに稼動するよう設計、設置されますから、電力をいつでも希望する出力で発電するわけではありません。夏場よりも冬場の方が発電量が多くなり、寒さの厳しい地域の方が、温暖で暖房をそれほど必要としない地域よりもコージェネの真価が発揮されることになります。

世界を見渡すとコージェネ先進国と呼ばれるデンマークでは、古くから政治的に推進が続けられ、国内の電力消費量の半分までをコージェネでまかなう規模に発展しています。分散型のコージェネ支援・推進では出遅れたドイツでも、2020年までに全電力の25%をコージェネ発電でまかなうために、経済的に魅力的なインセンティブを与える〈コージェネ法〉が整備され、推進が続けられています(2002年の時点では全電力の10%を供給)。

 
 バイオマス燃料補給

ドイツでは、コージェネの推進は出遅れましたが、フライブルク市の取り組みには素早いものがありました。1986年の時点では、ほとんどコージェネからの発電量はゼロに等しかったフライブルク市ですが、エネルギーコンセプトによる絶対的な優先政策を通して、2003年までにはすでに市内の全消費電力の48%をまかなうまでにコージェネ設置が進められたのです。

これまでのフライブルク市は電力供給を市外の石炭・原子力発電所に依存していましたから、電力を消費することは大量の温室効果ガスを撒き散らし、原子力にも大きく依存する状況が続いていたのです。しかし、エネルギー効率の高いコージェネによる電力の自給率が半分にまで高められたことで、暖房用の熱と電力を同時に供給する高効率の社会へと切り替わりました。そして、フライブルク市民の悲願である脱原発への道筋にも大きく光が差すことになりました

環境ジャーナリスト・村上敦

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