G8・脱温暖化 トップ
【グッドニュースの視点】洞爺湖サミットで得られたものは―取材を振り返って
(2008年7月22日 09:00)

G8首脳は勿論、中国やインドといった新興国やアフリカ諸国の首脳や国連事務総長、世界銀行総裁も来日した洞爺湖サミット。総経費600億円、動員された警官は2万1000人と、かつてない規模で開催されたサミットであったが、その割には、これという成果も無かったサミットだった。福田首相が「大きな成果」とした脱温暖化への米国の参加も、サミット閉幕のわずか数日後、ブッシュ政権は「既存の大気浄化法でCO₂排出規制は不可能」との見解を示し、事実上、サミットでの合意は反故にされてしまったかたちだ。これらの結果だけ観ていると、「バッドニュース」なのだが、あえて「グッドニュース」にこだわるとすれば、先住民族運動の盛り上がり、NGOの頑張り、市民メディアの活躍などは、評価できるのではないかと思う。

■アイヌモシリに世界の先住民族が集結

先住民族サミット最終日の「先住民族ミュージックフェスティバル」では、アイヌの伝統舞踊・民謡を
取り入れたパフォーマンスが披露された。

今回のサミットで特筆されるべきことは、アイヌモシリ(=北海道。アイヌ語で「人の住む静かな大地」の意)が舞台となったことだろう。今年6月、アイヌを先住民族として正式に認める歴史的な国会決議が採択されたのは、アイヌの人々の地道な運動が実を結んだ結果であろうが、洞爺湖サミット開催も追い風になったのではないか。7月1~4日には、「先住民族サミット」が札幌市で開催され、開発や環境、人権などの分野で、世界の先住民族の代表が熱く議論を交わし、「市民サミット」(同6~8日開催)でも、ミニー・デガワン氏らが先住民族の立場から発言していた。乱開発や自然破壊、人権侵害による多大な被害を被ってきた先住民族の視点からは、持続可能な社会を実現する上で、学ぶべきものが多いのではないか。

■NGOが果たした役割


岡田民主党副代表や、ドイツ、米国からのゲストを交えての脱温暖化シンポジウム 

今回のサミットで重要な役割を果たしたのは、世界各地、日本全国から集まったNGOだ。彼らはG8サミットの決定事項に対しての、新たな発表がある度に記者会見を開き、その問題点を明らかにするなど、強力なチェック機関となっていた。G8サミットの合意自体は不充分であるのは否めないが、NGOによる分析・評価が、今後の各国政府の取り組みに対する有権者の判断材料となるはずである。NGOの投げたボールを、一般の市民が受け止めれば、各国の政策をより持続可能なものに修正していくことも可能だろう。今回、温暖化防止に取り組むNGOのメンバーらが、岡田克也民主党副代表も交えて、日本がとるべき対策についてディスカッションを行ったことも、意義深い。公開の場でNGOと有力野党が、現在の対策を上回る内容での論議を進めていくことは、政府・与党に対しても良い刺激となるのではないか。
 

■市民系/独立系メディアの意義

いくらNGOが情報を発信しようとも、その受け皿となるメディアがなければ、世論への影響をおよぼすことは困難だ。国内のメディアに限っていえば、今回、NGOからの発信を最も受け止めたのは、市民系/独立系メディアだろう。市民サミットの生中継を行ったアワープラネットTV、市民目線でのG8サミット特集を組んだJANJAN日刊ベリタなどの市民系/独立系メディアは、大手マスコミの報道だけからは知りえない事実を伝えたのではないか。グッドニュース・ジャパンとしても、特に温暖化対策と生物多様性については、こだわって報じてきたつもりである。


7月5日、札幌市内で行われたデモ「 チャレンジ・ザ・G8サミット 1万人のピースウオーク」では、ロイターの記者を含む4名が逮捕(いずれも現在は「処分保留」で釈放)されるなど、警官・機動隊によるデモ参加者・記者への暴力行為が目立ったが、これらの問題をもっとも伝えたのも、市民系/独立系メディアだった。
 

■「一時のお祭り」ではなく、持続可能な社会のステップに

私達が直面している世界の問題は、解決不可能なものではなく、むしろ、各国首脳の怠慢により、その解決が後伸ばしにされていると言える。例えば、「2015年までに世界の貧困を半減する」というミレニアム開発目標の実現には、年間で500億ドルの追加支援が必要とされているが、これは世界の軍事費(2007年)のたった4%弱に過ぎず、イラク戦争での2ヶ月と9日分の戦費と同じ額だ。地球温暖化対策についても、スターン報告*は「地球温暖化の進行を放置すれば、世界のGDPは5~20%の損失を被るが、温暖化対策のコストは1%程度にとどまる」と結論付けている。問題解決のための道筋は既に開かれているし、その資金もないわけではないのだ。あとは「何を優先するか」という政治的な判断なのである。だからこそ、洞爺湖サミットを通して日本の市民社会が培ったものを育てていくことは、持続可能な社会の実現のためのステップになりうるのではないか。

志葉 玲

*イギリス政府の依頼を受けた経済学者ニコラス・スターン卿がまとめ、2006年10月に発表したもので、世界の温暖化政策に大きな影響を与えた。

コメント

  • 森田明彦 - 2008年7月24日 10:06
    私もG8NGOフォーラムの一員として洞爺湖サミットに向けた活動に関わって、日本社会が変わり始めていることを肌で実感しました。 いろいろと課題はありましたが、日本以外の世界では、市民社会と市民社会組織が国際的な問題に関する世論形成に大きな役割を果たしていることが今回の洞爺湖サミットを通じて、日本政府と日本の人たちに「見えた」ことが一番の成果だと私は思いました。 そして、自分のアタマで考え発言する市民の必要性に日本政府のかなりの人たちが気づいたと思います。
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