
環境問題や貧困、戦争と平和といったテーマで活動する世界の市民が札幌市に集まり、これからの世界の課題について話し合う「市民サミット2008」が2008年7月6日、始まりました(主催は「G8サミットNGOフォーラム」)。同日午後、札幌コンベンションセンターではオープニング・シンポジウム“人々の声を世界に響かせる”が催され、第一部では貧困問題、第二部では地球温暖化対策や持続可能な社会のあり方について国内外のゲスト・スピーカー達が熱く語りました。

第二部の最初のスピーカーは「不都合な真実」の訳者として知られる環境ジャーナリストの枝廣淳子氏。政府の地球温暖化問題に関する懇談会メンバーも務めた枝廣氏は、政府の温暖化対策ビジョン(通称「福田ビジョン」)について「いろいろと足らないことはある福田ビジョンだが、とりあえず『2050年までに60~80%削減』という目標設定ができたことは大きい」と評価。「まず未来の目標を設定して、それをどう実現するかと考えるバックキャスティングの考え方を政府が取り入れられたことが重要」と語りました。その上で、日本の温暖化対策の課題について「意識啓発や技術革新は得意だが、物事を変えるための仕組みつくりは苦手。政治の判断も、産業界の意向にとらわれるのではなく、科学的見地から『IPCCではこう予測されているから、こういう対策をとらなくてはいけない』と説得するくらいでなくては。地球の未来への責任と切迫感を持ってほしい」と注文をつけました。

続いてマイクを握ったのはユルゲン・マイヤー氏。環境と開発に関するドイツNGOフォーラム代表として政策提言してきた同氏は、「前回のサミットの合意から後退する恐れがある」として、G8各国の地球温暖化対策への姿勢を批判。また「温暖化対策を話すのは、サミットでもMEM(大量排出国会議)でもなく国連の場だ」と、国際的な枠組みから外れて温暖化対策を協議しようとするG8のあり方に疑問を投げかけました。また、「温暖化対策は経済的な負担」と見なしがちな日本の風潮に対して、「自然エネルギーは将来最大の産業になるし、石油や石炭などの地下資源はいずれ枯渇するので、今、対策を怠ることは結局自分の首を絞めることになる」と忠告しました。またドイツの温暖化対策について「2005年に導入された排出権取引が技術革新をもたらした。取引の税収は何十億ユーロにものぼり、途上国への技術支援や生物多様性の維持などの資金源となっている」「ドイツは1990年には3.4%だった自然エネルギー比率が2006年には12%までに上昇し、2020年には20~27%までに引き上げる計画だ。自然エネルギーによって、ドイツは既に1億トンの排出削減している」と報告。思うように温室効果ガス排出削減が進んでない日本に対しては「1990年比で7000万トン排出削減するという京都議定書の目標も、当初から野心的に自然エネルギーを導入していけば、既に達成できたはず。原発に依存し電力会社の寡占を許しているエネルギー政策が問題だ」と指摘しました。

三番手は、そのダム湖で32万人の周辺住民に影響が出るといわれたナルマダ・ダム建設への反対運動を組織し、計画を撤回させたことで有名なインドの環境・農民運動のリーダー、メダ・パトカル氏。「環境破壊というものは、個別の問題で考えるのではなく、それまで持続可能な生活をしてきた人々が資源を奪われ、搾取されていること、コミュニティーが破壊されていることが根本的な問題であると考えるべき」と提言。「ニーズを満たすためでもなく、人々が豊かにしているのでもなく、ただただ利益を上げることだけが目的となっている」と先進国の経済のあり方自体が問題だと問いかけました。インドへの温暖化の影響については、「2080年には、インドの川の水は3分の1にまで減少するだろうと言われている。現在既に何十万という人々が水や食料の不足から移住を余儀なくされている。地球温暖化がインドの貧しい人々をますます困窮させている」と深刻な影響が出始めていることを報告。一方で、「温暖化対策と称して米国や日本はインドを含めたアジアの国々に原発を売りつけようとしているが、とんでもないことだ」と、温暖化対策を口実にさらなる搾取や、公害が引き起こされようとしていると指摘。「奪われた土地や水、森を取り返すことが、私たちにとって一番大切なこと。私たちは貧しくなどない。ただ力を奪われているのだ」とパトカル氏が締めくくると、会場からは大きな拍手が起こりました。

最後にスピーチしたのは、グローバリゼーションに対して鋭い批判を続けるフィリピン出身の論客、ウォールデン・ベロー氏。ベロー氏は世界の市民の運動が、「30万人が反対デモを行ったスイス・ジェノバサミットの時のように、サミット自体を拒絶する動きと、英・グレンイーグルズサミットのように、人気ロックバンドU2のボノ氏のように著名人が各国首脳に働きかけるなど、G8首脳を問題解決のパートナーと認める動きの、二つに分断されている」と分析。その上で、「G8は様々な問題に対して、解決するようなそぶりを見せているが、不平等で途上国をさらに貧しくする貿易交渉の問題や途上国債務の削減、地球温暖化への対応など、何も解決していない。約束を守らないG8首脳達をパートナーとして認めるわけにはいかない」と痛烈に批判。また、来日した20~30人の活動家たちが成田や千歳の空港で入国を認められず追い返されたり、入国の際に不当に厳しく長時間にわたる尋問を受けたりしたことに関して、「サミットはどんどん非民主的なやり方となっている」と強く批判しました。
「市民サミット2008」は6日~8日の日程で、札幌コンベンションセンター、北海道大学、北海道クリスチャンセンター、札幌エルプラザの4会場で催され、世界各国からのゲスト達を交えたワークショップやシンポジウムが行われます。詳しくは市民サミット2008のウェブサイトをご覧下さい。
(志葉玲)















