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間伐材を燃料に芸術作品を生み出す-陶芸の窯「増穂登り窯」を訪ねる
(2008年4月30日 19:20)

山梨県増穂町にある標高850メートルの山の中に、縄文土器と同じ“野焼き”手法で行われる陶芸の窯「増穂登り窯」がある。全国からプロアマ含む多くの陶芸家がこの窯に通う。記者が登り窯に訪れたとき、山桜が満開で、山肌を覆う新緑と桃色が眩しかった。

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               自然に囲まれた増穂登り窯。山桜が満開

現在、陶芸窯のほとんどは電気かガスで焼かれており、間伐材を使っている窯は少ない。“増穂登り窯”はその技術を高く評価され、平成19年度のストップ温暖化活動コンテストの優秀賞を受賞している。画家の池田満寿夫さんが芸術性の高い陶器を制作した事でも有名で、今年5月11日(日)にはその活動がNHK新日曜美術館でも紹介される予定だ。

太田治孝さんがこの地で焼成燃料の薪の準備を作り始めたのは1990年。当時はエコの事は意識せず、野焼きの陶芸の美しさを追求していくうちに、間伐材を使うという現在の手法に辿り着いた。以来18年、一億円もの私財を投入し、自然の力を借りて450回の窯焼きをしてきた。

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     故池田満寿夫氏の陶芸作品とともに太田治孝さん

日本は世界最大の森林保有国

日本の国土の68%は山林。面積比で言えば世界最大の森林保有国だ。ところが高度経済成長期時代から海外から安い輸入材が使われるようになり、国内の林業は衰退し始めた。誰も手入れをしなくなった山には、日が当たらず成長しない間伐材が余っている。間伐材を放置しておくと山林全体が荒れ果ててしまう。

太田さんは赤松、杉、檜、松、クヌギ、くりなどの間伐材を使う。周辺の山から、4メートルのトラックいっぱいに材を運び、チェンソーで40センチに切ってもらう。その中には、丸太から家材で使われた柱の余り部分である切端(セッパ)材も含まれる。材木自体はほとんど無料だが、山に入り、木を切る人件費やガゾリン代など、一台のトラックにつき10万円ほどのコストがかかる。それらを井桁(井の形に交互に重ねる)に摘んで乾燥させ、穴窯(棚板15.6枚の中型サイズ)で約100時間焼成する。赤松材は400束から500束(2~3トンほど)を燃料として使用する。CO2は発生するが、自然由来なので環境負荷がプラスマイナス0となる。増穂登り窯には8種類の窯があり、15センチ四方で焼成コストは500~700円ほどだ。

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     池田満寿夫さんが作った満寿夫八方釜。360度から薪をくべる事が出来る

材料になる赤松材が絶滅の危機

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            柱などに使われた残りの切端(セッパ)の赤松材

太田さんが特に気に入っているのは赤松材だ。赤松材だけで燃焼した陶器の焼き肌は、完全燃焼するので灰かぶりが少なく、炎の色は夕日色で、焼き上がりに深く複雑な味わいが出る。赤松材は日本産の針葉樹の中では分布する部分が最も多く、家具や柱などにも幅広く使われてきた。ところが、温暖化の影響で今赤松が絶滅しかけている。原因は、松くい虫だ。白く1~2ミリの小さな虫だが、荒れた山に生えた赤松材の体内に入り、枯らしてしまう。標高600メートルまでは松食い虫が発生し、ほぼ全滅だという。山の生態系のバランスが崩れてきているのだ。枯れた木はタバコの火による山火事を起こしやすいという危険性もある。

現在日本の陶芸人口は1000万人と言われている。彼らが自分たちの土地の間伐材を活用すれば始めれば、森と人間が共存する事が可能かもしれない。太古から人々に恵を与えてくれていた日本の山こそが、循環型エネルギーの宝庫なのではないか。「自然にむかって100%の力を注げば、100%返ってくる。日本における自然革命を起こさなきゃダメだ!」と太田さんは熱く語る。

(増山麗奈)

5月18日(日)まで、千葉市美術館で増穂登り窯で焼かれた作品を含む「池田満寿夫知られざる全貌展」が開催中。
「知られざる池田満寿夫展」
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2008/0405_1/0405_1.html

増穂登り窯の陶芸制作ドキュメンタリービデオや、陶芸作品が循環型のアート展「エコ@アジアニズム」大阪展に展示される予定。現在エコ@アジアニズムでは、5月15日まで環境問題をアートから訴える絵画、写真など様々なジャンルの作品を公募している。
http://renanews.exblog.jp/7278835/

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