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農業はビジネスだ!明日の農業を育てたい―イシグログループ
(2008年8月17日 09:00)

愛知県の渥美半島一帯に位置する田原市。一年を通して温暖な気候に恵まれ、メロンやキャベツの一大産地としても有名な日本を代表する農業地域です。

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この地で薬局として創業し、90年以上に渡って田原を拠点としながら日本の農業を支え続けているイシグログループを訪れました。

イシグロ農材株式会社、イシグロ農芸有限会社などの7つの会社から成るイシグログループは、ガラス温室やビニールハウスの設計から施工、コンピューター制御による栽培システム、そして、生産物の販売や流通までをトータルにサポートしています。

社長室長の大橋進吉さんに会社の概要をお聞きし、試験農場に案内していただきました。

世界規模での食糧難が叫ばれている今、日本の食糧自給率の低さについて関心を持つ機会も増えてきています。しかし、実際に農業といっても具体的にどのようにして生産や管理を行っているのかご存知でしょうか。恥ずかしながら知識のなかった記者にとって、見聞きするものはどれも興味深いものばかりでした。

自然に大きく左右される農業は、その年の気候によって、生産される量、質が毎年同じになるとは限りません。
家庭菜園でしたら、その時々で農作物の出来がバラバラでも問題ないでしょうが、日本国民の食の供給を担う農家にとっては死活問題です。そのリスクを少しでも軽減するために、様々な技術が導入されています。

作物を荒らす病害虫については、科学的な診断によって原因を突き止めることで、最も適した防除法を用います。
防除法にも様々ありますが、天敵昆虫を入れることで病害虫を捕食するといった、自然に基づいた防除法を取り入れ、できるだけ科学農薬に頼らないように工夫されています。

これまで農家の長年の経験によって受け継がれてきた農業のノウハウを、数値化してデータにし、効率よく高収量・高品質の農産物を育てる環境をサポートするシステム開発も行っています。

グリーンナビΣは、温度・風向・風速・日射などをパソコンで一元管理し、温室の天窓の開閉や暖房機などによる温室環境を制御する複合的なシステムです。 

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コンピュータで一元管理されている

それから、土壌条件に左右されない「袋培地栽培システム」は、袋の中の水分量を測定して自動的に水やりを行う画期的なシステムです。

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袋培地栽培システム 

これらのシステムは、新規就農希望者など、明日の農業を担う後継者にとっても心強いものとなると思います。

イシグログループでは、農産物を安定的に生産できる次世代農業経営者の育成にも力を入れています。
これまで、あまり経営的な感覚を必要とされなかった農業ですが、これからは経営感覚を持った就農者でなければ生き残れない時代になるだろうといいます。新しく農業を始めようと考える人々に向けて、必要な経営感覚と確かな栽培技術、そして流通に至るまでのサポートを施した研修コースが今ちょうど始まったばかり。一人一棟のハウスを任され、栽培力・販売力・経営力を研修によって身につけていきます。

経営的な農業をサポートするため、JGAPの取得にも力を入れ、自社の社員にも38名のJGAP指導員資格の取得者がいます。
JGAPとは、Japan Good Agricultural Practiceの略であり、「適切な農場管理を行える仕組み」という意味です。
農産物の安全や環境への配慮、農業者自身の安全、そして、農場経営と販売に関する適切な管理が行えるという認証であり、消費者にとっては信頼できる農業生産者であるという一つの目安と言えるでしょう。

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見渡す限りのトマトの苗

試験場から数分車を走らせたところにあるくくむ農園
「くくむ」とは、その語感どおり「育む」からきています。

ここでは、研究のノウハウを生かし、有機資材を中心とした土づくりにこだわった土耕栽培によって大規模なトマト栽培が行われています。
この時期はちょうど出荷がひと段落し、新しく中玉トマトの作付けが行われているところでした。

1ヘクタール=約3000坪の見渡す限りのトマトの苗。
ハウス内には前述のグリーンナビΣなどが完備されており、イシグログループが誇る様々な設備が兼ね備えられています。

オランダで大々的に導入されている水耕栽培では、かなりの高収量が期待できますが、その味はお世辞にも美味しいとは言えないそうです。
やはり、甘みがあって美味しいのは土耕栽培のトマト。
沢山の微生物が生きる自然の土の力が持つ魔法には敵わないのですね。

生産されたトマトは、くくむガーデンという販売施設で購入することができるそうです。

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くくむ農園で収穫された中玉トマト 

目指すところは、地域循環型の農業生産。
生産物を地域で販売し、生産の際に出た不要物を堆肥化し、それをまた地元の畑で使用する。地産地消を促し、地域の活性にもつながると大いに期待されるところです。

今回お話を伺っていてひしひしと感じたのは、農業に携わる方々の切実な危機意識でした。
今や農家の平均年齢は65歳を超えています。新しいビジネスチャンスとして魅力ある農業にするために、そして、この国の食糧自給率を少しでも改善するために、新しい就農者を増やし、国民の食を守ろうと知恵を絞っていらっしゃる方々の努力が一日も早く報われますように。私達も毎日の食から考えなければならないことがきっと沢山あるはずです。

(古橋理紗)

※生物多様性の問題に取り組もうとしているNPO法人アースデイ・エブリデイの理事で会社員の服部徹さんが、お盆休みを利用して農業研修を受けました。近くその体験記もお届けします。

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