「あなたの大切なものは何ですか?」という問いかけで始まる本がある。タイトルは、『地球温暖化、しずみゆく楽園・ツバル』。平均海抜が1メートルというこの国では、地球温暖化のため海面が年々上昇し、浸水の被害が深刻となっている。ツバルの現状から環境問題を考えてもらおうと、同書の著者でNPO法人「宇宙船地球号」事務局長・山本敏晴さんの講演会が2009年3月14日(土)、名古屋市中区の男女平等参画推進センター(つながれっとNAGOYA)で開かれた。
ツバルについて語るNPO法人宇宙船地球号事務局長の山本敏晴さん
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)のパートナーシップ事業。講演に先立ち、同法人が製作した映画『ツバル 大切なものに導かれて(Pictures of TUVALU)』が上映された。
医師、写真家、NPO事務局長など、多彩な顔を持つ山本さん。医療援助団体から派遣され、アフリカや中東の紛争地帯などで緊急医療援助活動を行ってきた。その現場で、「未来に残る意味のある援助をしたい」と願い、「本当に意味のある国際協力とは何か?」「持続可能な世界を作る方法とは?」という疑問を胸に立ち上げたのが、NPO法人宇宙船地球号だ。
世界中の子供たちに大切なものの絵を描いてもらう目的で各学校をめぐる同NPOの『お絵かきイベント』は、ツバルをはじめ50カ国以上で行われている。平均的にみて、家族の次に家、宗教関係、愛情・友情、自分の国・国旗で約9割、残りの1割の子供たちは、その国にしかない特徴的なものを描くという。お絵かき後に子どもたちの家族を戸別訪問し、両親の仕事や家庭環境も含め、なぜその子がそれを大切だと思うようになったかをきちんと取材するそうだ。
サンゴ礁でできたわっかのような形の国、ツバルの海は、「私がこれまで訪れた70カ国以上の中で、最も美しい」と山本さんは言う。子どもたちの描いた絵―。「わたしの大切なものは、ツバルの美しい砂浜だわ」「ツバルの美しい夕暮れだよ」「人々のつながりよ」「学校です」「水」・・・ツバルでは雨水が飲み水となっている。そして13歳のマルアオ君が描いたのは、体温計がささった地球。上部に煙をはく工場、下部に沈みゆく船が描かれている。添えられた文字は、「ボクの夢は、地球がもっとよくなることだよ」。
「大切なものはなに?」に応えて、ツバルの子どもたちの描いた絵
ツバルは地盤が柔らかく、低気圧による高潮現象で砂浜が削られるため、今では椰子の木が一日に1本ずつ倒れているという。「将来、沈んでしまうのが怖い」という絵を描いた子もいる。海面上昇はひとごとではない。このまま温暖化が進めば、日本でも沈むところが出てくると、山本さんは警鐘を鳴らす。日本は温暖化の加害者であるとともに、被害者にもなりうるというのだ。また、ツバルで海面上昇とともに近年深刻な問題となっているのが、ゴミ問題だ。先進国から持ち込まれた多くの製品が、使用後にゴミとなって捨てられたままになっている。
では、遠く離れた私たちに、何かできることはあるのだろうか? 水や電気の節約はなおのこと、環境に配慮した企業や工場を支援すること。CSR(企業の社会的責任)を実行している企業の商品を買うことで、消費者がいい企業を育てることができると、山本さんは提案する。学校を回り、「将来、会社に入ったら、環境にいいことをしてね」「消費者になったら、環境にいいものを買ってね」と子どもたちに呼びかけている。「愛情の反対側にあるのは、憎しみではなく無関心です。無関心でいることは、未来に生まれてくる100億の子供たちを見殺しにするのと同じことなのです」という言葉に、ツバルの子らの、未来を信じて疑わない一途な瞳が重なった。
(浜村良子)
















