生物多様性COP10 トップ
企業風土・社会風土を変えていくことが大切 - 岩間芳仁・自然保護協議会事務局長に聞く
(2008年10月6日 09:00)

ボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)では、企業が生物多様性の保全に積極的に取り組むことを目標とした「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」のリーダーシップ宣言がなされました。COP10でもビジネスと生物多様性は重要なテーマとなることが予想されます。日本の経済界として、COP10に向けてどんな取り組みをしていくのかを、バルセロナで5日から始まった第4回世界自然保護会議にも代表を送り込んでいる社団法人日本経済団体連合会・自然保護協議会の岩間芳仁事務局長にお聞きしました。 

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―COP10に対して、経済界としてはどんな取り組みをお考えですか。

2010年は、生物多様性条約のポスト2010年目標※が決まる節目の年です。COP10では途上国のプロジェクトをどういう形で先進国が支援するかについての政策の枠組みに関する議論が活発に行われるでしょう。森林整備、希少種の保全、失われた自然の復活など世界の生物多様性の保全に対して日本としてどのような貢献をしていくのかを、国内できちんと議論する必要があると思います。単にお金を出せばいい、会議を開けばいい、イベントを行えばいいというのではありません。日本としての優先順位、日本の強みを活かせるものは何かを考えて、地に足の着いた議論を行う必要があります。企業としても、生物多様性の議論に積極的にかかわっていかなければならないと思っております。

一部で議論されているような資金メカニズムの議論というよりは、企業の活動自体における生物多様性への実質的な配慮が大事で、そのことを世界に発信していきたいと思っています。また、従来のようにCSRの観点から取組む、というよりは、NGOや自治体などと協力して地域力を高める方向で企業が可能な貢献を支援していくことが大事だと思います。21世紀、22世紀に向けて、企業として努力しなくてはいけない方向を見せながら、その集大成を発信していきます。世界の人たちやNGOの協力を得て、企業で今後のあり方をまとめていきたいと考えています。

※「2010 年までに現在の生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という、2002年の生物多様性条約第6回締約国会議(COP6)で採択された目標。COP10では、2010年目標に替わる目標を決める予定。

呼び水効果もたらす自然保護基金

―地球温暖化防止に比べて、生物多様性への取り組みは全体的に遅れているのではないですか?

日本経団連は、世界自然保護連盟(IUCN)に世界の経済団体で最初に加盟しており、4年に1回の世界自然保護会議にも毎回、会長か幹部が出席しています。91年に公表した地球環境憲章や2003年の自然保護宣言には、生物多様性保全への配慮が入っています。

私たち自然保護協議会もNPOとのパートナーシップの形成に努力しています。自然保護基金がこれまで支援してきた個々のプロジェクトは約800件に上っています。自然保護基金の特徴は、まとまって大きなお金を出しているのではなく、経団連の基金がサポートすると他の企業や公的機関からの支援も得やすくなるというところにあります。資金援助を得る場合、入口がたいへんですので、自然保護基金の支援は呼び水効果の役割を果たしてもいます。

自然保護協議会会長の大久保尚武積水化学社長は、自然保護基金が支援している海外や国内のNPOを視察して回っています。地域の関係者や自治体、議会、政府の人たちと海外で懇談の場を持つと、プロジェクトを担っているNPOが評価されていることを地域の関係者にアピールすることができます。特に途上国ではそうしたことが大切になります。

本業での生物多様性保全への取り組みが大切

―本業での取り組みをどう促進していくかが重要ですね。

そうです。今は、企業の貢献について話し合うと、企業がお金を出すという話ばかりになります。生物多様性の問題が散発的に地域で起きているというならそれでもいいのですが、今は世界レベルでアクションをしていくことが大事です。どこか大きな企業が何かやればいいというのではなく、多くの企業が、生産、消費だけでなく、調達、物流、廃棄、リサイクルなど事業全般で生物多様性に配慮し、市民社会と連携した事業活動を行わなければなりません。本業でやることは何かを押さえることが大事なのです。

また、従業員や家族が無関心、というのでは本末転倒です。日本には雇用されている人は5千万人います。雇用者とその家族の意識が生物多様性保全重視に変われば、日本の人口の多くが生物多様性の保全に関心を持つということになるのです。従業員や家族の意識付けを行うことは非常に重要だと思います。これらについても、NPO/NGOとの協力が大事です。NGOとのプロジェクトやイベントを通じて、長期、継続的に取り組んでいくことで、意識は高まります。

―より本質的な変化を起こしていこうという考えなのですね。

単にわが社はいいことをやっています、生物多様性に関心をもっていますとPRするのは初歩的です。企業風土、経済・社会風土を変えていくことが大切で、そこに焦点を当てた取組みが必要なのです。2010年をそのいいきっかけにしたいと考えています。これまでCOPへのビジネスの参加はあまりありませんでしたが、NGOと協力して流れをつくっていきたいと思っています。

今、地球全体の問題として考えなければならないのは、企業のPRにとどまらない、より低負荷な環境技術の応用による、産業化や自然回復、生物多様性の持続可能な利用です。また、自然界の貴重な遺伝資源の利益を衡平にもたらし、かつ、その資源を世界の人が平等に使い合えるような仕組みが求められます。

多くの日本人は、自然を大事にし、うまく付き合っていくということが、意識としてはありますが、今はそれを忘れがちな環境にあります。遺伝子的にはあるので、それをきちんと表に出すきっかけが必要です。社会としてやるには、COP10のような大きなイベントはすごく意味があります。こうした価値観を世界と共有するのは、すごく意味があると思います。プレゼンがうまいとか、パフォーマンスがうまいというのではなく、地道で具体的なアクションを長期、継続的に行うことが大事で、そういうことに貢献していきたいと思っています。

(安在尚人、写真・伊藤剛)

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