■未明まで続いた決議文書づくりと発表準備
今回のユースカンファレンスの目玉はなんといってもコレ。生物多様性条約の国際的な議論がされるCOP9で、全世界の政府代表団にユースの主張を伝えたこと。
この決議文書はこのユース合宿を通じて参加者全員で作ったものです。それは決して簡単なことではない。
参加者全員の合意でつくるので、とても時間がかかる作業。意見の衝突はそこまで多くなかったものの、皆「これも盛り込むべきだ、あれも盛り込むべきだ」で、全体調整も含めて、議論は夜まで及んだ。

プロジェクターで文書を映しだして議論している
そこで終わりと思いきや、何やら今度は小道具をつくるということに。もう10時近いのに…と思ったが、発表においては重要なものなので、皆明らかに疲れている中、作業に取りかかった。
僕は発表文作成の担当だったので、小部屋でパソコンと格闘していたが、小道具班の人が来て、僕に手伝ってほしいことがあるという。僕じゃないと手伝えないことなのか? と思いながら、小道具作業場に行ってみると、オリガミのツルを折ってくれというのだ。ほほう、そういうことか…と思って、こんなことで協力ができるのならお安い御用といくつか作った。

数々の小道具
すると、おお!さすが日本!とみんな大盛り上がり。お礼を言われたものの、じゃあ今度は魚を作ってくれ!船を作ってくれ!という。日本人はオリガミで何でも作れると思ってしまったようで、注文がエスカレートした。
そんなことを言われても、魚や船など、つくった覚えはないし、つくり方を見ないとつくれないと思ったが、そう言ってしまってはカッコ悪いし、なにより失望させてしまう。そこで、いままでのオリガミ知識をフル活用して、なんとか魚と船をつくった。鶴に比べたら、なんと完成度の低いものになったが、彼らは喜んでくれたので、まあ良しとするか。
時計が午前3時を示した頃、やっと作業が終わり、みなフラフラと部屋に帰っていった。
■そして発表の舞台、COP9が始まった
発表当日は、午前6時に起床して、会場に向かった。リハーサルをして自分たちの出番を待つ。会場には各国政府の偉そうな人が徐々に集まってくる。発表を控えた、僕の友人のクリスティアンはとても緊張していた。なんといったって、全世界の政府代表団やNGOなど会場に1000人弱はいようかという大舞台で、発表するのだ。

COP9メイン会場
開会式が始まった。壇上で様々な国のエラい人が話をしているのだろうが、ほとんど頭に入らない。そしてついに出番が来た。発表メンバー5人は舞台へ上る。
今回の僕らの発表は大きく3つに分けることができる。まず最初に私たちが何者で、どのように主張をつくり上げたのかを伝える。次に決議文書からCOP9への要求を7つ抜粋して発表する。最後にちょっとしたパフォーマンスをする。
7つの要求は以下の通り。生物多様性の保全だけではなく、持続可能な利用、遺伝資源へのアクセス、教育、先住民の参加などがしっかりと盛り込まれていることを強調したい。
【生物多様性条約に対する要求】
1.生物多様性条約の3つの目的を達成するよう各国に強く主張します。保全持続可能な利用遺伝資源へのアクセスと利益配分
2.すべての学校のカリキュラムに持続可能な開発のための教育を組み入れることを要求します。
3.すべての国が少なくとも国土の10%を自然の状態で永久に保存することを定めた議定書の採択と海洋保護区の包括的なシステムの設立を要求します。
4.すべての生物に対する特許権の禁止を要求します。
5.各国政府は1992年のリオサミットにおいて決められた予防原則を守り、すべての国において農産物の遺伝子組換えを禁止することを要求します。
6.先住民、地域社会、市民社会組織の全面的かつ効果的な政策プロセスへの参加の保証を要求します。
7.生物多様性保全に向けて、明確で数値をもった目標を含んだ長期的な戦略の設定を要求します。その実施のための適切な手法と独立したモニタリングのメカニズムが必要です。
上の要求を、一つずつ伝えた。すると、発表中にいきなり拍手が起こる。しかも、挨拶が終わる時の通常の拍手ではなく、それぞれの要求をに対して賛同する人からの熱烈な応援の拍手だ。これは主に会場にいるNGOや先住民からのものだった。ときには「そーだ、そーだ!」「いーぞ!」といった声まで混じる。
それを聞いていた僕は、僕らがいま政府代表団に伝えていることは、あまりなされてないことで、だからこそ、とても大切なことなんだなと実感した。
すべてを伝え終わったが、発表はまだ終わらない。ただ要求を伝えるだけでは、つまらないので、僕らはちょっとしたものを用意していた。実は私たちが発表を始めたときから、舞台の上には、シーツをかぶされた物体があった。

シーツが取り去られると、身の丈ほどある天秤の模型が舞台上に姿を現した。これがメンバーが徹夜で作ったものだ。
ここで、片方の皿に、お金、産業、遺伝子組換えなど生物多様性に悪影響を与えているものを模したおもりを乗せると、天秤は大きく傾いた。
次に、もう一方の皿に動物や植物など生物多様性を模したおもりをのせたが、まだ生物多様性に悪影響を与えているものの方が重く、傾いている。会場からは残念そうなざわめきが聞こえる。
「ここで…」とユースは続ける。生物多様性条約を模した小さなおもりが登場する。これを生物多様性側の皿に置いたところ、見事に釣り合った。

最後にユースから「お金や産業も大切だが、生物多様性とのバランスをとっていかなければならない。それがこの生物多様性条約の役割だ。この天秤のバランスはあなたたちにかかっている。」
(A SEED JAPAN 林雄太)
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