こんな小型の設備で簡単にプラスチックができるとは! 木質プラスチック「モクチック」を使った製品の商品化に成功した中日精工(本社・愛知県豊川市)の試験プラントを見て驚いた。この機械を使えば、山間地の製材所で木くずを使ってプラスチックを作ることも夢ではなくなる。
同社の「木質プラスチック」研究開発室の近藤泰人室長に、設備を案内してもらいながら、開発の苦心談などを聞いた。

木質プラスチック製造の試験プラント
本社工場の片隅にある試験用の木質プラスチック製造プラントの広さは、テニスコートほどもない。その中に、ボイラー、圧力釜、移動用コンベアー、粉砕機が並ぶ。製造工程は、極めて簡単だ。
・まず、密閉した耐圧容器に木材チップやかんな屑、オガコを入れ、高温高圧の蒸気で蒸すことによって、木質のリグニンとヘミセルロースを分断する。
・そして、蒸煮した木質を含水率5%まで乾燥させる。
・次に、木質を粉砕して粉末にする。
・最後に、金型に充填した木質粉末を加熱・加圧することで、蒸気処理で分断されたリグニン、ヘミセルロースが溶け出して流動化する。これを冷却して固化する。
たったこれだけで硬いプラスチックの製品が出来上がる。蒸気だけを使っており、薬品類は一切使用していない。

原料となる木くず

1 くずを蒸煮する圧力釜 2 乾燥機で乾燥

3 粉砕機で粉に

成型した原料(左)に高温で圧力をかけると製品に(右)
木質プラスチック製造の原理は、名古屋大学の木方洋二名誉教授が開発した。異業種交流会で木方名誉教授からその話を聞いた同社の森久博代表取締役会長は、自動車用部品を作りたいと思い、近藤さんに開発を命じた。以来5年間、かかりきりで開発に取り組んできた近藤さんは「品質の劣化を防ぐために含水率を下げても、成型の際の流動性があまり低くならないという条件を探すのに苦心しました」と振り返る。
木質プラスチック100%で初めて商品化されたのは、高級ステレオ用スピーカー用のインシュレーター(制振材)。底に置くと、振動をうまく吸収して音響効果を高める効果がある。アイシン高岳株式会社から「TAOC」の名称で販売されている。
まだ、原料が十分スムーズには射出成型機に流れ込まず、成型が難しいという課題があるため、今のところ、木質100%でできるのは、比較的形状が単純なものに限られている。近藤さんは「将来、いろいろなところで研究されて、成分の半分近くを占めるセルロースをある程度分解できるようになれば、複雑なものも木質100%にできる可能性はあると思います。」と語る。
近藤さんの夢は広がる。
「製材所の片隅に設備を設置すれば、製材の仕事をしながら作業をすることも可能です。廃棄物のおがくずを使えれば、製材のコストも下げられ、国産材の競争力強化にもつながります。製材所は規模を縮小してきており、空いている場所を使えば、工場建設の余分な費用もかかりません。今ではほとんど使われていないペレット工場を活用して、プラスチックの粉をつくることもできます。」という。
プラスチック成型を手がける中小企業は地方に分散しており、粉をそれらの企業に供給することもできる。言わば、中山間地に“分散型コンビナート”ができるようなものだ。
木質プラスチックのペレット1㎏の製造に要するCO2の発生量は、1.09㎏。トウモロコシなどを原料とするポリ乳酸は3.92㎏、石油が原料のポリプロピレンは5.08㎏で、他のプラスチック原料に比べてCO2の発生を大幅に減らすことができる。
食料の原料となるトウモロコシなどを使わず、製造工程も極めて簡素な木質プラスチックへの期待は大きい。
(安在尚人)
















