地球環境問題のことを考えると、新しい建物を環境配慮型にしていくことはもちろん重要ですが、今ある建物をいかに有効に使っていくかもとても重要なことです。自然素材を中心とする安全な素材を使って行う「無添加リフォーム」に意欲的に取り組む株式会社OKUTAの山本拓己社長に、家を長持ちさせるだけでなく、家族の絆を強めるのにも役立つリフォームについてお聞きしました。
――リフォームするうえでのこだわりは?
「最小単位のコミュニティをよくしないといけない。地域をよくする前に自分の家庭をよくしようよ」というのが私の考えです。「地域活性化とか日本を変えようとかいうけれど、一軒一軒の家庭がパワフルでないと活性化もできない」といつも思うんです。家族の絆があって外で活動していると、もっとパワフルになれるはずです。
リフォームは家族の絆をつくるものです。家族がどうコミュニケーションするかで家をつくっていく。今の家はコミュニケーションを前提には設計されていません。機能別に空間の広さを割り振っているだけです。うちは、距離感、家族の関係を入れてカスタマイズをしていきます。
家が変わることで家族の関係性も変わります。家族の会話の中身が変わったり、お父さんが外食せずに毎日家で食事をするようになったりするんです。
――素材にこだわる「無添加リフォーム」の効果は、そんな面にも現れるのですね。ところで「無添加リフォーム」はどんないきさつで生まれたのですか。
戦後、建築基準法で最低の基準を定めて住宅をたくさんつくるという時代になっていましたが、90年代には住宅リフォームが成長期を迎えました。バブル経済が崩壊して、新しい家を手に入れにくくなり、リフォームをしようとする人が増えたのです。しかし、工務店は職人の世界で、サービスも不透明で、リフォーム需要はあるのに、それに応えられないという状況でした。そんな中で、うちの会社は、料金の内訳を明確にし「安くて早いリフォーム」で急成長していました。
しかし、先代の社長は、それが顧客の満足に必ずしもつながっていないことに疑問を感じていました。リフォーム市場が成熟期を迎えていた2002年に、方向性を持った特徴のある会社になろうと、自然素材を使った「無添加リフォーム」に切り替え、営業方法もLOHAS studioを設けてそこに来てもらうという来店型にしました。
それまでは、住宅をつくる際に「健康」という概念はありませんでした。早くて安くて使いやすいものを使って家を建てていたのです。国交省の基準も健康にはまったく配慮されていませんでした。そうした時期にロハスという言葉に出会って、日本にもこの波がやってくるだろうと思ったのです。
ロハス層の団塊ジュニアに顧客を絞り込み、
モダンなデザインにこだわる
――軌道に乗せるまではたいへんだったようですね。
日本の家はビニールとプラスチックでできているようなものですが、まず、塩化ビニールクロスは使わない、というところから始めました。しかし、当時は共感してくれるお客様はほとんどおらず、売上も大幅に落ちました。
それでも当時の主力商品だった化学建材や工業化建材から珪藻土や無垢材の床材、セルロースファイバーの断熱材、ニカワの接着剤などの自然素材に次々と基本仕様を変えていき、「無添加リフォーム」というブランドを展開していきました。
「ビニールクロスでもいいから安くやってよ」というお客様には「よそでやってください」と言ってきました。ロハス層は4人に1人という調査があり、うちは25%のマーケットでいいと考えたのです。
顧客の対象は団塊ジュニアに絞り込みました。団塊の世代はマスマーケットでしたが、その子どもたちはモザイクのように自己最適を目指し、自分スタイルを実現しようとしています。住宅にもお金をかける人たちなのです。そういう人たち向けのフルオーダーメイドの家は、絶対に大手にはできません。当時の自然素材のリフォームと言えば、「和」とか「山小屋風」でしたが、うちはモダンなスタイルのデザインや演出にこだわって、様々な賞も受賞してきました。
数を売って成果報酬を得るスタイルに慣れた社員には手間のかかる仕事はとても面倒で、社員の半分が辞めました。しかし、新しい理念に共感する社員を入れていくという方針で求人をすると、いい社員がわんさか集まりました。「お客様をだまして売りたくない」という人もいました。共感する人がいるということは、マーケットはあるということだ、と思いました。ロハスという社会現象も追い風になって、今では業績も回復しています。
――この夏に引っ越された本社社屋にもいろいろこだわりがあるようですが。
事業のポリシーを本社社屋で表現しようとしたんです。この事務所は、元は銀行だったんです。金庫は倉庫にしています。時代性のある建物の形を生かして、あと30年か40年がんばってもらおうと思います。中古のビルでも省エネビルに生まれ変わらせることができますし、昔の歴史的建物はできるだけ残していった方がいいですよね。今の四角い建物が美しいとはどうも思えない。古い方が遊び心がありますよ。形にしても。
新しい社屋には省エネ性能の高い真空ガラスや太陽熱温水式床暖房を入れたりしていますが、それだけでなく、屋上では、ナス、トマト、ピーマンなどの野菜を作っています。LEDのライティングで夜もいい感じで、社員も和んでいますよ。
(安在尚人)
























