奄美諸島にある、沖永良部島から後ろ髪を引かれながら仙台に戻ってきた。今回も大いに島暮らしを楽しんだ。20年前の3m程の船で魚釣りをする予定は、残念ながらエンジン不調で叶わなかったが、揺れる船の上で何度もエンジンを積み下ろし・・・バランス感覚の訓練には大いに貢献した(笑)。
5月になれば、いつもは水温も上がるのだが、今年はウェットスーツを着なくては長くは海に入れないほどで、島の長老に聞いてもこれほど暖かさが戻らない年は記憶に無いと言う。毎年異常気象が定常化してしまった観もあるが、こんな中で、ETCを取り付けたものだけに高速道路1000円乗り放題の高待遇を与え、また、それに乗ってしまう多くの人たちの心の弱さを弄び、CO2を撒き散らすことに罪悪感を持たない政治家たちは一体何を考えているのかと、悲しく、情けなく思ってしまう。
さて、2020年の温室効果ガス排出削減率をどうするか、有識者会議が開かれた。経団連の主張する1990年比+4%は論外としても、麻生首相がこの辺りでとおっしゃる-7%も国民のアンケート結果で支持されたものだからと、根拠はきわめて薄い。2050年までに世界でー50%を宣言したわが国がどのようなロードマップでそれを達成するのか、そのために2020年にどうしたいのか、などという論点はない。どうしてこの国は長期戦略が立てられないのか、考えてみた。
きっとそれは、われわれに稲作漁労民の血が依然色濃く流れているからなのだろう。稲作農民に長期戦略は不要である。すべてはお天道様次第。今日は雨が降っているから草抜きをしようか・・・その場その場で判断をしなければならないのである。それに比べて、欧米人に代表される畑作遊牧民は、搾取の民である。群れの移動を予測し、先に先に回って獲物を待つ。しっかりしたロジックと予測力が必要なのである。
この差か・・・とは思うものの、もう少ししっかりしてもらわねば、未だに100年に一度の経済危機などと嘯き、次世代に重い借金を背負わせるときではない。このチャンスにこそ「ものつくりの価値」「お金の価値」「人の価値」を徹底的に見直さなくてはとは思えないのか。価値の転換こそが、これから求められる新しい社会システムに必要なのだとは思えないのだろうか。テレビや映画では、悪徳代官は越後屋とともにいつも裁かれるものだが、誰が裁くのか、それもお天道様なのだろうか・・・
今年1月に亡くなったディープ・エコロジーの提唱者アルネ・ネスは豊かであることがすべての本質であると主張した。もちろん物質的な豊かさではない。沖永良部島の人たちは、我々が失いかけている真の豊かさを今も厳として持ち続けているのである。長い時間を見せてくれるものが、そこかしこに転がっていて、それがこれからの求められるライフスタイルの一片を見せてくれているのである。素晴らしいことであるが、一方、本土からやってくるいろいろな毒に知らず知らずのうちに犯されていることも事実である。
この島に通い始めて12年を超えた。たくさんのことを学ばせて頂き、これからもそれは続くだろう。一方では、何を教えて頂いたのか、この島の何がすばらしいのか、それを具体的な形としてお返しすることも私の仕事ではないかと思いはじめた。8月には小さなシンポジウムを沖永良部島で開こうと思っている。
09.05.31 Emile H. Ishida
石田 秀輝(いしだ ひでき)
1953年岡山県生まれ。78年伊奈製陶株式会社(現㈱INAX)入社、2004年より東北大学大学院環境科学研究科教授。多くの実戦経験をもとに、「自然のすごさを賢く活かすものつくり」のパラダイムシフト実現に国内外で積極的に活動している。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の人材育成や、子供たちの環境教育にも強い関心を持っている。地球村研究室代表、ネイチャーテック研究会代表、ものつくり生命文明機構理事、アースウォッチ・ジャパン理事ほか近著「自然に学ぶ粋なテクノロジー」が好評。



























