一般的に、世界の各都市のクオリティーを比較してみるときには、その都市の人口1人当たりの緑地面積を知ることも大切な要因であることは、言うまでもありません。
面積が多いほど、その都市は質がよく、より裕福であると見なされます。ブラジルについてみると、クリチバ市の1人当りの緑地面積は55平方メートルと、サンパウロ市の0.6平方メートルに比べ大変大きな数字です。
ではなぜ、南米の貧しい一地方都市が、国連の求める1人当たり12平方メートルの数倍もの公園緑地を整備できたのでしょう。

オペラ劇場公園
それには、次のことが挙げられます。
1.前回にも述べた、ひとを大切にするまちつくりの徹底
(クリチバでは、ときにはアスファルト道路も公園にする)
2.経済的にも何の利用もできないところを公園化
3.河川を保護しながらの公園化
4.自然林を残す法をつくり、さらに開発権の移転を可能にした
5.市の歴史と深く関わりがあった場所、工場、石切場などを公園化
このように次々と公園をつくっていると、いつのまにか1人当たり55平方メートルになっていたのです。では、どのようにそれらの公園ができたのでしょう?
例えば、石切場公園(オペラ劇場公園)というところがあります。
クリチバ市の市営石切場であった所が、1960年ごろから市街地が近くに迫って来たので、ダイナマイトも使用できなくなり、そのまま放置されていました。すると、そこがゴミの捨て場になったり、泥棒の隠れ場所などの危険な場所にもなり、周辺の住民からひっきりなしに苦情が来ていました。
ゴミや建築廃棄物なども道路ぎわまでいっぱいになっており、奥の方は三方が石を取ったままの40~50メートルほどの高さの石壁で囲まれており、それこそ何の役にも立たないところというのが最初の印象でした。
しかし、その石壁も20~30年の間に植物が生育してきており、人間が破壊してきたところを自然の緑が表面を包み、感動を与えるものでした。そして50メートルの高さの石壁という欠点を、逆に有利なものとして使おうという逆転の発想を提案。自然の音響効果が抜群ではないかという考えにたどりつき、「オペラ劇場公園」とすることに決まったのです。
建物は周りの自然を鑑賞できるように、全てガラス張りにしました。夜は石壁の照明で、それこそ大自然のなかで音楽を聴いているような、幻想的な気分になります。また、石壁に囲まれた5万人収容の大野外劇場もつくり、大変な人気となりました。クリチバ市で1番汚く、問題をかかえたところが、その欠点を長所に変え、自然の力と人の力がともに働き、調和された1番美しい、楽しいところになった例です。
もう一つの私有地であった石切場を整備した「ザニネリ公園」は、人が自然を破壊したところで環境について学ぼうと、「環境自由大学」という施設が建てられました。ここも自然の力で回復がなされており、市民が環境都市について学ぶには理想的な場所となっています。母親や先生、企業家、タクシーの運転手まで、あらゆる市民が講座に参加して、環境についての意識改革に役立っています。

タングア公園
「タングア公園」も私有地の石切場跡で、産業廃棄物が保管されていました。すぐそばにはクリチバ市を60キロに渡って流れるバリグイ川の最上流部があり、水質汚染の危険もありました。土地所有者との話し合いで、市が持つ工業団地内の土地との交換で、公園としました。土地の落差を利用して人工の滝をつくり、単調な石壁に変化をもたせ、大景観に仕上げました。同時に、バリグイ川の水質も保全できたのです。
(元クリチバ市環境局長の中村矗=ひとし)
※この記事は、中日環境netにも掲載されています。




















