世界中を駆け回る気鋭の日本人カメラマンたちがこの春、新たなプロジェクトを共同で立ち上げる。その名も「地球写真プロジェクト Eyewitness」。変わりゆく自然や動物たちにレンズを向け、地球温暖化などの環境問題から時代を切り取り、未来への問いを投げ掛ける。プロジェクトの呼び掛け人で、当サイトに「地球レポート」を連載する小原玲さんとテレビCMにも出演する桃井和馬さんに、設立に至る思いや展開するテーマなどを聞いた。

地球写真プロジェクトについて語る桃井和馬さん(左)と小原玲さん
-今回のプロジェクト設立のきっかけは
小原 自分はもともとフォトジャーナリストで、当時は環境のことより、人間の世界を追うことで精一杯だった。でも流氷のアザラシに出会い、その取材を20年続け、流氷の異変を伝える役目に回って、これは自分1人の力では足りないと思った。地球の変化のスピードに追いつかない。小さい力を集めるしかないと思っていたら、桃井さんも同じことを考えていた。
桃井 私は今もフォトジャーナリストだが、紛争や戦争が何から始まるかということを考えていくと、環境問題に行き着く。人間は、集団という枠をつくり「隣の芝生は青い」という憎しみを生む。このような枠を超え、県境や国境を超え、地球という枠までも超えて考えれば、戦争なんてしているひまはない。そういうことを伝えよう、そういう空気を「翻訳」しようと考えたときに、ジャーナリズムと環境がつながった。
-お二人のつきあいは長いんですね
小原 桃井さんとは同年代で、同じ現場ををいくつも踏んだ。昔から個性のある仕事をする人だと思っていた。内戦取材でアフリカのソマリアに入るとき、他のカメラマンが空路でどう入るかを考えているときに、桃井さんだけは難民がたどった道を知るために、必死に陸路で入ることを考えていた。
桃井 あれから18年が経ち、小原さんは動物写真家にかわっていた。自分にアザラシは撮れないけれど、自分だけに撮れるものがある。それを伝える表現者でいたい。
桃井和馬(ももい・かずま) フォトジャーナリスト。1962年生まれ。米テンプル大学教養学部アメリカ研究学科卒。これまで世界140ヵ国を取材し、「紛争」「地球環境」などから独自の切り口で「文明論」を展開。印刷媒体だけでなく、NGO/NPO、および教育・環境団体との共同プロジェクトにも多数関わる。メディア出演多数。第32回太陽賞受賞。JVJA(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)会員。東海大学非常勤講師。恵泉女学園評議委員など。webサイトhttp://www.momoikazuma.com(上はギアナ高地を写した作品)

-集団プロジェクトの狙いは
小原 自然写真家は自然を見つめる。フォトジャーナリストは人を見つめる。それぞれの視点が合わさると、すごく面白くなる。そこで今回のプロジェクトに6人(小原、桃井のほかに倉沢栄一、山下大明、福田幸広、野田雅也)の写真家を選んだ。どの人間も、奥深い取材をし、それぞれの対象をしっかり見つめている。今の時代の目撃者といえる6人が集まった。この力をあわせれば、間違いなく最高の「地球の今」が集まる。
-「環境」をどのように写真にとらえますか
桃井 いい写真は想像をさせる写真。例えば松尾芭蕉の「古池や 蛙飛び込む……」というような写真を撮りたい。音まで聞こえてくるような。実は、私は今回のプロジェクトで芭蕉の足跡をたどろうと思っている。わびさびの世界観をどう表現していくか。そこには、次の社会の価値観が見えてくると思う。
小原 身近な小さな自然から、その太古の姿を想像するきっかけになる写真。たとえば、名古屋にいる小さなホタル、ヒメボタル。その原風景は何かと考えているうちに、身近な竹やぶや雑木林が、その太古の姿である自然林につながった。環境問題を考えるときに、人間は「自然にどうしたいか」という視点はあっても、「自然がどうしたいか」という視点はおろそかになりがちだ。自然は今も、森を作りたがっている。
小原玲(おはら・れい) 動物写真家。1961年生まれ。報道写真家として天安門事件、湾岸戦争、ソマリアの飢餓などを取材。天安門事件の写真では米国LIFE誌のThe Best of LIFEに選ばれた。TVや雑誌を通して、地球温暖化による流氷の減少とアザラシの赤ちゃんの被害を伝えている。小学校の教科書「こくご1(下)」(教育出版)にシロクマの写真物語が掲載されている。この10年はホタル前線を南から北まで追い撮影、2007年放送されたNHK BSハイビジョン特集「ホ タル前線を追う」の案内人を務めた。愛知県名古屋市在住。webサイトhttp://www.reiohara.com(上はカナダ・セントローレンス湾流氷を写した作品)

-2010年に名古屋で開かれるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に向けて世界にどうアピールしますか
小原 COP10のために撮るわけではないけれども、僕も名古屋にいるし、ひとつの節目になると思っている。6人の視点をまとめて、「今の地球」の姿を残しておきたい。
桃井 写真は言葉や国境を超えて、必ず訴える。今を伝えると同時に、未来への希望や展望を想像したくなる、そんな写真を集めたい。それが私たち目撃者の役目だ、と思っている。
(2009年3月、名古屋城で。聞き手・安在尚人、関口威人=インタビュー写真も、今井麻希子、渋沢直美)

























