鈴鹿という名が付くように東海地方に自生するカンアオイの仲間だ。愛知県内でも東に行くに従って、ヒメカンアオイやイワタカンアオイなどが自生する。関東に行くとカントウアオイがあるなど、変種が多い植物のようだ。
中央の赤枠内にあるのがスズカカンアオイの花。虫すら気付かないのでは、というくらい地味(?)
こんなに細かく分類されているのは、江戸時代から愛されてきた植物だからかもしれない。葉にはまだら模様があり、それを愛でる風習があったという。ちなみに、徳川家の「葵の御紋」は、近縁種「フタバアオイ」が図案化されたものだ。別名サイシン。漢方薬としては「土細辛」と言い、せき止め効果がある。
初めて見た人もなんとなく引かれないだろうか? 葉はハート形で愛らしく感じるし、株の姿はまるでシクラメンに見えなくもない(?)。花だって干し柿のへたのようだが、ルーペで見ると世界最大の花「ラフレシア」に似ている。こんな2cmほどのちっぽけな花に、1m近い大輪を想像するのは私だけかな。
花は明るい林の中、落ち葉に埋もれるように咲いているので、まったく目立たない。花びらに見えるのは、実は、がく。つまり花びらのない花だ。それでも、江戸の昔から愛されてきたのは、地味だけど、どこか味わい深い魅力を持っているからだろう。
私は、このスズカカンアオイこそ毎年最も早く咲く花ではないだろうか、と思っていた。1月に海上の森(愛知県瀬戸市)を散策していて、花の咲いた株を見つけたことがあるからだ。
そんな矢先、ある植物研究家から1株譲り受け、もう7年も育てている(ほとんど育たない植物だけど…)。それで分かったのは、1月どころか、12月にはもう開花しているということ。マンサクやフクジュソウよりずっと早く咲くのには、正直びっくりした。
5月、虫眼鏡で葉の裏をじっくり観察すると…きれいな黄色や水色の粒を発見する。大きさは1mmほど
そして5月の大型連休のころ、葉に大きな変化が起こる。上の小さい写真を見てほしい。葉の裏側に真珠のようなきれいな粒をまとうのだ。さて、この粒は一体なんだろう?答えは次号、このコーナーで紹介するよ。皆さん、予想してみてね。
写真・文 高山博好(動物写真家)
【スズカカンアオイ】
(学名:Heterotropa nipponica=ヘテロトロパ・ニッポニカ)
ウマノスズクサ科の多年草。日本固有種。間伐された明るい雑木林などに生える。名古屋市内では守山区に分布しているが、存続基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、現時点での絶滅危険度は小さいものの、著しい減少傾向にある。名古屋市の準絶滅危惧(きぐ)種に分類されている。
《プロフィル たかやま・ひろよし》
1963年、愛知県刈谷市生まれ。水族館飼育員として8年間勤務後、フリーの写真家に転身。自然の不思議さを雑誌や社会教育の現場で伝える。40歳を過ぎてから学んだ大学院では環境学を専攻、人の暮らしと隣り合う自然に注目している。耕さない田んぼの学校「エコたん」を主宰。























