■環境基準は満たしたが・・・
今月号の特集では、堀川の水質浄化の取り組みについてお伝えした。このコーナーでは、その堀川が注ぎ込む名古屋港の水質について見てみることにしよう。
周辺に広大な臨海工業地帯が形成され、大小17本の河川や水路から生活排水が流れ込む名古屋港。伊勢湾の最も奥に位置するため、汚れた水がよどみやすいという。
高度経済成長期の真っただ中である1963年度、名古屋港のCOD平均値は14mg/lを記録した。CODとは「chemical oxygen demand」の略で、日本語に訳すと「化学的酸素要求量」のこと。水質汚濁の指標の一つだ。海水中に含まれる汚濁物質を分解するために必要となる酸素の量を表していて、値が高いほど汚れが進んでいる。
現在、環境省が掲げている名古屋港内湾部での環境基準はCOD8mg/l以下。しかもそれは、日常生活において不快感を生じない限度の基準で、数値としては最も甘いものだ。
70年に開催された「公害国会」後に、企業に対する排水基準や下水道の整備が進んだ。そのおかげで水質は回復し、70年代後半以降は5mg/lで推移。
2007年度には3.2mg/lまで下がっている。実際、ガーデンふ頭から海面を眺めても、漂うごみはなく、水が汚れているという印象も受けなかった。
■水質浄化の鍵は市民の努力
名古屋港の水質浄化の取り組みは、これでゴールを迎えたわけではない。植物プランクトンが発生しやすい夏場には、赤潮が起きて水面がコーヒー色になる場所があるなど、まだまだ課題は多い。
環境省の諮問機関・中央環境審議会の統計資料※によると、伊勢湾の汚れの原因となっているのは、工場・事業場といった“産業系”の排水よりむしろ、一般家庭・浄化槽、下水道から出される“生活系”の排水だという。
名古屋港管理組合企画調整室環境保全センターの岡本玲理さんは、名古屋港の環境を守るためには市民の協力が必要だと呼び掛ける。「洗剤の残りや残飯、米のとぎ汁などに含まれる有機物が植物プランクトンの栄養になり、大量発生の原因になります。水で流す前に、食器の汚れをふき取るだけでも違うので、ぜひ実践してください」。
この30年間、ほとんど変わらなかったCOD値を、さらに下げるのは困難な課題だ。とはいえ、名古屋港の水はもっときれいにできるはず。その鍵になるのは、私たち市民の努力。家庭から無駄な廃水を流さないよう心掛けることが、求められているのではないだろうか。
※1999年度「伊勢湾における発生源別汚濁 負荷量の割合」























