セミリオンという楽器。ミニ琴だが大正琴とも違い、本来の琴の音に近い。岐阜県中津川市に工房をもつ、木工作家の松井宏一さんが独自に考案・創作したもの。その楽器にほれ込み、6畳ほどの小さな部屋で、教室をはじめた人がいる。青木真佐子さんに、話を聞いた。
テーブルひとつの喫茶室「ブルーツリー」で仲間と楽しく語らう青木真佐子さん(写真:右)
名古屋市の瑞穂通り商店街にある、1948年に創業の文具店、「丸日商店」。2代目のご主人とともに、妻の真佐子さんは住居兼店舗の建て替えを実行した。間口が狭く、縦長の土地。お客さんに、お茶を一杯飲んでもらう場所がほしいと、店の奥に6畳弱の小さな部屋を作り、テーブルと椅子を置いた。脇には、一人用の流し場がしつらえられた。
もともと木の香りが好きだったという青木さん。木で作られた小物を店で売りたいと、以前からよく行っていた中津川で木工作家を紹介してもらい、たずねて行った。そこで出会ったのが、松井さんの作ったセミリオン。早速、琴の師範を務める顔見知りの足利博子さんに講師を依頼。快諾を得て、教室がスタートした。青木さんは、生徒第一号だった。
講師の足利博子さん(写真:手前)の熱心な指導で進むセミリオン教室
セミリオンは、セミナリー(勉強する)+音(おと)の造語(音を勉強する道具の意味)で、松井さんの命名によるもの。原材料は、地元の桜や桐の天然木で、本来の用途に使用し余った部分―、要するに端材だ。木の目が細かいほうがいい音が出るという。それは、年輪が密になった部分で音がより共鳴し、反射するから。また木の材質により、音の柔らかさや硬さなど、音質も違ってくる。弦は13本。爪は普通の琴と同じものを使用する。持ち運びが楽で、机の上でも弾けるのが利点。また、弾くときに通常の琴ほど力がいらず、年をとっても気軽に演奏できるという点も、特長の一つだ。
天然木の端材で作られたセミリオン 材料にこだわった手作りケーキのセット
パソコンや、子供たちの好きなゲームに代表されるように、電子音が飛び交う時代。「心を奮い立たせるにはいいのかもしれないけれど、時として殺伐とした気持ちになります。川のせせらぎや風にそよぐ葉音など、自然の音をもっと大事にしたい」と、講師の足利さんは話す。日本の気候が育んだ天然木から奏でられる、自然に近い音。琴やセミリオンの音は、耳を澄まし、自然が紡ぎだした音を愛でる、日本人の感性が編み出したものだ。
文具店奥の小部屋は、今では地域のコミュニティ・スペースに変わりつつある。セミリオンのほかに、手芸、紅茶、美容メイク教室などが開講し、週に2日(火・金)、テーブル一つの喫茶室「ブルーツリー」が営業。無添加で、材料を吟味した、青木さん手作りのケーキが好評だ。
文具店の奥にある、6畳に満たない広さの喫茶室「ブルーツリー」
「買い物のお客様やご近所の奥さんたちが、ちょっと来てはおしゃべりをしていってくれます」。ともすると、物置にもなってしまうような6畳弱の空間で、笑いや語らいが生まれ、文化の芽が育っていく。そこは、隠れ家のような、ひっそりとして賑やかな、心温まる憩いの場所。そして青木さんの、人やモノに対する想いのつぼみが花開こうとしている、ささやかな空間。集う人々の後ろで、静かに笑みを浮かべる青木さんのまなざしには、いつも“感謝”の2文字があふれている。
(浜村良子)
*喫茶室「ブルーツリー」: 毎週火・金曜日営業 10:00~14:00
コーヒー200円、ケーキセット400円
名古屋市瑞穂区瑞穂通1-24 (名古屋市博物館南) 052-841-4167(TEL・FAX)
*セミリオン教室: 毎週水・木曜日 19:30~20:30
受講料1回1,300円
*3月4日(水)の「Risa」(中日新聞に折り込まれる環境情報紙)に、関連記事が掲載されます。
尚、連動企画は今回をもちまして終了いたします。




















