パソコンの登場、そしてインターネットの普及。ややもすれば飲み込まれてしまいそうな情報化社会にあって、自らの体や眼、舌で感じ、納得したものを、ほんの少し、インターネットを通して販売している人がいる。重度の障害を持った西垣順一朗さんに話を聞いた。
パソコンの置いてある仕事場兼自分の部屋からリビングへ、這って来てくださった。爽やかなあいさつと、ハキハキした語り口。脳性マヒを患っているため、全身に不自由を抱える身。椅子に座るにも、介助が必要だ。
そんな西垣さんが営むのが、インターネット・ショップ「アジアの風」。扱う品は、モンゴル製のラクダの毛布とフェルトのソックス、タイ製のシルクのスカーフとスリランカ産の紅茶の、4種類。いずれもアジアに生きる人々が、自然と向き合い育てた原料から、ひとつひとつ丁寧に仕上げたものばかり。
モンゴルの冬は、時にマイナス40度にもなる酷寒の地。GOBI(ゴビ)社の毛布は、ゴビ砂漠に生息するフタコブラクダの毛100%を使用している。「少々値が張りますが、軽くて温かい。冬はこれをまとってモンゴルの人々や風景を思い浮かべながら寝ます」と話す。自由に寝返りの打てない体を、冷気の隙間なく優しくくるむこの毛布は、ひと冬ひと冬、寒さから西垣さんを守ってくれる。羊の毛のソックスも、日常履いていて、心から重宝と感じているもの。変形している西垣さんの足に合う靴がないため、室内だけでなく、外出用にも履いているそう。「冷える足元を守ってくれるスグレモノで、素朴な色と形が気に入ってます。着脱がラクなので、障害者や高齢者にもとてもいいと思います」と、PRにも熱が入る。商売というよりも、自分が使っていいものだからオススメしたいという、商品への愛情が伝わってくる。モンゴルの遊牧民らは、履き終えたソックスを草原に放置し、土に還してあげるという。
美しい光沢を放つシルクのスカーフは、手で紡ぎ、染め、織られたもの。カラフルな色のバリエーションが楽しい。また、紅茶の箱に貼ってあるシールの文章とデザインは、西垣さんの手作りだ。
西垣さんの手作りの文章とデザインのシールが貼ってある紅茶の箱
社教センターでパソコンを習って以来、その面白さにとりつかれ、個人的にも教わって技能をマスターした。商品の仕入れや受注は、メールでのやりとりが主だ。わずかにしか動かない指をキーボードに乗せる。ポツリポツリとだが注文のメールが入った日は、心が小躍りするくらいうれしい、と口元をほころばせる。
趣味は、10年前から始めたサッカー。電動車椅子で、ボールを操る。「美龍士(びりゅうし)」というチームに所属し、近くのリハビリテーションセンターで汗を流すスポーツマンの一面も。
西垣さんにとって、毎日見つめるパソコン「ウィンドーズ」の画面は、未知の人々にアジアの風を運ぶ窓であり、また逆に、見知らぬ人からたくさんの元気を受け取る窓であり、そしてそれは、西垣さんが、日々の生活の中で社会という人間同士の営みとつながっていく、希望の窓となっている。
(浜村良子)
*2月4日(水)の「Risa」(中日新聞に折り込まれる環境情報紙)に、関連記事が掲載されます。























