「里山の木々に覆いかぶさって枯らしてしまうので、生物多様性が損なわれる。本来の自然をなくしてしまう侵略者だ」。里山再生活動をしている人たちの中には、こんな風にモウソウチクのことを言う人もいる。
確かに、全国各地でモウソウチクに飲み込まれ、竹林と化した森を見掛けるのは事実だ。“悪者”ととらえられても仕方ないのかもしれないが、当のモウソウチクはきっと「そんなこと言われても…」と困っているだろう。

きれいに手入れされたモウソウチクの林。傘を差して歩けるほどの間隔に切りそろえるのが目安と言われている
かつて、里山には欠かせなかった竹林。それがいつから悪者呼ばわりされるようになったのか?
おいしいタケノコが採れたり、かごやざる、すだれが作れて便利だったりと、いいことずくめだったはずの竹だが、今、私たちの周りを見渡すと、タケノコの水煮は中国などからの輸入品だし、かごやざるはプラスチック製に。その結果、人々から見捨てられ“竹やぶ”という言葉がぴったりの薄暗く近寄りがたい存在になってしまった。
竹はすべての節が同時に成長する不思議な植物で、1日で1m以上も伸びた記録があるという。ちょっと頭を出したタケノコも、数カ月後には20m近くにまで成長してしまうのだ。畳んであったちょうちんを伸ばす動きを想像してみたらいいだろう。
あっという間に大きくなってしまうのが特徴の竹と付き合っていくには、上手に利用することが必要だ。まずは、竹の良さを見直すことが大切だと思う。竹製品が多く作られるようになれば、竹林は定期的に間伐され、その自然環境は保たれる、といういい循環が生まれるはずだからだ。使い捨ての割りばしはもったいないが、日本の竹製なら貢献することが多いのになぁ。

昔は全国各地に竹職人がいて、竹かごなどはごく一般に使われていた。しかし、今では職人の数が減り、その製品はブランドバッグ並みの値段が付くようになってしまった
モウソウチクは遠い昔、中国に渡っていた僧侶が日本に持ち帰ってきたものだ。名前の由来は、中国の孟宗という人が「タケノコを食べたい」という病気の母のため、冬山を探し歩いたという言い伝えに基づいている。
そんな伝説まで残し、里山生活を助けてきたモウソウチクを見直す機会が来てほしいと願っている。
【モウソウチク】
(学名:Phyllostachys pubescens=フィロスタチス・プベセンス)
日本で生育しているタケ類の中で最大種。1本で70個近くの節があり、25mの高さに達するものもある。人里に近い山地や川岸に見られ、花はめったに咲かない。3月から4月にかけて市場に出回るタケノコは、肉厚で軟らかく、えぐみも少ないのが特徴。春の味覚の一つとして食されている。
(写真・文 高山博好)

プロフィル たかやま・ひろよし
1963年、愛知県刈谷市生まれ。水族館飼育員として8年間勤務後、フリーの写真家に転身。自然の不思議さを雑誌や社会教育の現場で伝える。40歳を過ぎてから学んだ大学院では環境学を専攻、人の暮らしと隣り合う自然に注目している。耕さない田んぼの学校「エコたん」を主宰。





















