ある冬山を散策していたとき、動物の気配にドキッとさせられたことがある。山の斜面にある落ち葉の上で何やらガサゴソと動いているのだ。その足音の大きさからしてサルかキツネか、と探したがなかなかその姿は見つからなかった。
それもそのはず、その音の主はニホンリスだったのだ。体長20・ほどの小さな体が、落ち葉の中を潜るように移動していた。見つけにくくても仕方がない。地下にクルミなどの餌を隠す習性があるので、きっと探していたのだろう。
名古屋でもこのニホンリスが暮らしている場所があるのをご存じだろうか。標高193m、市内最高峰の東谷山(守山区)には、数は少ないものの野生のリスがすんでいる。
木の実のほか、キノコや昆虫も食べる。森の中で耳をすますと、カリカリという食事の音が聞こえるかも
リスと共存できる環境を作ろうと長年にわたって活動しているボランティア団体「守山リス研究会」によると、東谷山で繁殖して増加したリスは、隣の森林公園に移動するという。
リスの移動と聞くと枝から枝へジャンプする、とイメージしがちだ。しかし、森が道路で途切れると、枝伝いに渡ることができないので、地面を走ることもあるという。移動中に車にひかれてしまう危険性もある。東谷山と森林公園の間で、そうならないか心配だ。
さてさて、こんなかわいい動物が近くに暮らしているのだから、お弁当を持って東谷山に出掛けてみてはいかがだろう。名古屋の街の広がりや遠くに連なる山々など、山頂からの眺めは最高。ふもとにはフルーツパークもあって1日中楽しめる。守山リス研究会が定期的に開催している観察会に参加すれば、出会える可能性はより高まるかも。とにかく、彼らの環境を知ってほしい。
会えなくても、がっかりしないで。ふんや食べかす、足跡など、動物たちが残したフィールドサインを見つけて、その行動を想像するだけでも十分に楽しめるはずだから。
さあ、木の実の写真はニホンリスが残したフィールドサイン。この写真から何が分かるかな?クルミの殻は東谷山で、マツボックリは海上の森(瀬戸市)で見つけたものだよ。
年齢によってクルミの食べ方が異なる。若いリスはかじった跡が残る(左端)が、老齢のリスはナイフでスパッと切ったような断面(左から2番目)となる。右側の二つ、エビフライのような形のものは、マツボックリの種子を食べた跡
【ニホンリス】
(学名:Sciurus lis=スキウルス・リス)
体重250~310g、頭胴長16~22・、尾長14~17・。本州から四国、九州にかけて分布している日本固有種。広葉樹林に生息。昼行性で、特に朝方に活発になる。春から秋にかけて2~6頭の子を産む。名古屋市の絶滅危惧(きぐ)種・A類に分類されている。
(動物写真家 高山博好)

プロフィル たかやま・ひろよし
1963年、愛知県刈谷市生まれ。水族館飼育員として8年間勤務後、フリーの写真家に転身。自然の不思議さを雑誌や社会教育の現場で伝える。40歳を過ぎてから学んだ大学院では環境学を専攻、人の暮らしと隣り合う自然に注目している。耕さない田んぼの学校「エコたん」を主宰。





















