古紙を主にリサイクル事業を行っている(株)エス・エヌ・テーの、堀川をはさんで西側斜め向かいにある「健康生活館マジックマーマ」。古くなった社屋を、フェアトレード商品などの販売場と文化教室などのレンタルスペースを併設したおしゃれなショップに建て替えた。リサイクルを軸に事業の多様化を図る篠田社長に、この場所で話を聞いた。
「紙1トン作るのに、水がどれくらい必要かわかりますか?」ここでいう紙とは、古新聞をリサイクルして作った紙のこと。インクを落として、新しい紙に再生させるためには・・?正直、見当がつかない。「古紙をリサイクルして1トンの紙を作るのに、100トンの水を使うのです」と答え、こう続ける。インクに含まれるカリやリン酸は、赤潮の原因にもなる。リサイクルの過程でそれらは最終的に海に流され、それを海の微生物が食べ、めぐりめぐってやがては人間の体内にも入ることになる。なにより、水に飢えている人々が世界中にどれほどいることか。「ですから、環境と生活とは、背中あわせなのです」。リサイクルは環境にとって必要なこと。社会に貢献しているという仕事への自負はあるが、言葉の持つ時代の雰囲気には、容易に与(く)みしない。「リサイクルの表面だけ見るのではなくて、生活という視点で考えると、今の事業の延長で他にもやれることが見えてきたのです」。
白亜の概観。一歩中に入れば、あたたかな木の温もりが迎えてくれる
美しい手描きの白磁器が展示され、文化教室やイベントが開かれる2階
マジック・マーマの名は、お母さんのエプロンのポケットからは魔法のようになんでも出てくるという、イメージから。ここではフェアトレード(貧困に苦しむ発展途上国の人たちから、直に、適正かつ公正な価格で継続的に商品を買う)商品などを販売する。たとえば、バングラデシュのジュートで作られたコースターやエコバッグ。バングラデシュでは地層に含まれる発がん性を伴うヒ素が地中水に溶け込み、井戸水を主な生活用水とする同国の人々の間で健康被害が進んでいるという。マジック・マーマとエス・エヌ・テーが発行する“かんきょう通信15号”には、こんな記述がある。『多くの輸入品に頼る日本では、自国の環境を守ると共に、生産している他国の土地の汚染も防ぐ必要があります。いずれは、私たちの口からカラダに入る食品が安全であることを願うなら、生産地の安全な環境を支援することは避けられない道になるでしょう』。
「お買い物で国際協力」を合言葉に途上国の人々が丹精こめて作った品を扱う
フェアトレードのコーヒーなど。こわれた食器や不良品で再生したReー食器も販売
この通信の編集を担当しているのは、同社の井上麻乃さんと芳金秀展(よしかねひでのぶ)さん。芳金さんの主な業務は、「ゼロワンダー生ごみリサイクルシステム」の営業だ。学校やスーパー、レストランなどの生ごみを機械(ゼロワンダー)に投入し、バイオの力で発酵促進材に変換。それを提携先の牧場や堆肥場で堆肥化し、有機栽培農家へ。できた有機作物をまた学校やスーパーで消費するという、持続可能な循環型システムの販売に日夜励んでいる。これも篠田さんが“生活”という観点から、将来は事業の柱の1つにしたいと始めた新規事業だ。
エコブログ「しのちゃんの地球レスキュー隊」も開設、情報発信に工夫を凝らす
業界では地域住民の参加・協力を礎としてリサイクルの戸別回収が始まったが、家々を回るうち、高齢世帯がかさばる生活用品の宅配サービスを欲していることを痛感する。マジック・マーマでは、トイレットペーパーや介護用品なども置き、宅配している(3000円以上で無料)。「地域に定着していきたいんです」。定着するということは、認知され、受け入れられるということ。社員が玄関先に置かれた新聞紙の包みを持っていくときに、体の調子はどうか、かさばるものや重いもので、次回持ってきてほしいものはないか、など気軽に声掛けができたなら。またそれを受け、お客様から何かを依頼されたなら。地域の人々とそんな関係を築いていきたいと願う。「そのためには、営業にも現場にも、女性の力が必要です」。リサイクル業界に新風を吹き込むエス・エヌ・テーの新たなステージには、いきいきと働く女性の姿がまばゆく映る。
(浜村良子)
*11月5日(水)の「Risa」(中日新聞に折り込まれる環境情報紙)に、関連記事が掲載されます。




















