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原発推進は温暖化対策になるのか?環境NGOに聞く
(2008年10月17日 09:00)

原発は地球温暖化防止に貢献するか、否か―今年7月の洞爺湖サミットでの首脳宣言の中で、原発の活用を温室効果ガス削減の「有効な手段」と位置づけられたことが、波紋を呼んでいます。政府や原発推進側、そして一部のメディアも「原発はCO2を排出しない」と、そのメリットを強調するものの、各地の原発が相次ぐトラブルに見舞われていることも事実です。「温暖化対策としての原発推進」をどう見るべきなのか。温暖化防止を訴えてきた環境NGOに聞いてみました。

 
昨年7月、地震に遭った柏崎刈羽原発は現在も停止したまま。 

■原発では間に合わない?

「地球温暖化防止には今後10年程に具体的に温室効果ガスを下げなくてはならない。設置計画から運行まで、インフラの整った先進国でも10年以上はかかる原発では対策として間に合わない」と指摘するのはグリーンピース・ジャパンの鈴木真奈美氏。「IEA(国際エネルギー機関)の研究では、温暖化対策で一定の効果を出すには、世界で少なくとも700基の原発が必要になるとされていますが、コスト的にもスケジュール的にも、全く非現実的です」。
鈴木氏は「そもそも、原発は地球温暖化対策として役に立たない」とも語ります。「IEAによると2030年までに世界の原発を倍増させた場合の温室効果ガスの削減効果はたった4%ほど。それだけの資金があるならば、自然エネルギーに使った方がずっと良いでしょう」。グリーンピースの報告書『エネルギー[r]eボルーション』によれば、自然エネルギーの資源量は、現在の技術で利用可能な分だけでも世界のエネルギー需要の5.9倍。温暖化対策はもちろんのこと、石油や石炭など化石燃料の枯渇に備える上でも、自然エネルギーは重要なようです。

 
岩手県の葛巻町はエネルギー需要の185%を自然エネルギーでまかなう。 

■市場は冷ややか/むしろ省エネを

今年8月末まで環境エネルギー政策研究所に勤め、洞爺湖サミットでもNGO側の意見を首脳達に伝えるため活躍した大林ミカ氏も「日本の原子力産業は“原子力ルネッサンス”だと沸いていますが、市場は冷めた目で見ている」と指摘します。「確かに米国はブッシュ政権が原発の推進を掲げていますが、もう任期切れとなりますしね。イギリスも、英国核燃料公社は、傘下にあったウェスティングハウス※を東芝に売却している。つまり、マーケット的にはイギリスが原発をどんどん進めていく、というシグナルは見えないわけです。東芝は途上国での原発建設をにらんでいるようですが、核拡散という不安がありますし、そもそもインフラも整ってない途上国では現実的ではなく、むしろ分散型の自然エネルギーの方が効率的です」。大林さんは日本の温暖化対策に対し、「まず省エネをきちんとやること」と注文をつけます。「例えば事業所の断熱など、改善の余地はいくらでもあります。よく産業界は『日本のエネルギー効率は世界一で、もう排出削減の余地はない』と主張しますが、実際には日本がトップだったのは1990年代まで。それ以降は、業種によっては他の国々に追い抜かれています」。

ウェスティングハウスは米国の総合電機メーカー。1950年代以降、原子炉製造に力を入れ、独占的なシェアを占めたが、1988年に原子力部門が英国核燃料公社に買収され、2006年に東芝に売却されている。
 

■原発増設より、天然ガス火力発電の有効活用を

「原発の活用は以前からの方針でしたが、成功していません」と指摘するのは、気候ネットワークの畑直之氏。「政府は1998年の地球温暖化対策推進大綱で『原発を20基増設する』と計画、これでCO2排出を削減していこうとしました。しかし、実際には増設は難しかった上、『87~88%』を目指していた原発の稼働率は、60%に留まっている。火力発電の増加もあり、発電部門の排出量は逆に増えてしまったのです」。
畑氏は「むしろ、火力発電を石炭中心から、天然ガス中心に切り替える方が効果が高い」と言います。天然ガスの1.7倍もCO2の排出量が多いのに、この間、日本の火力発電では、石炭が重視されてきました。
「電力会社が石炭を使いたがるのは、安いからでしょう。税率でも石炭は優遇されており、現在、トンあたりの税は700円。これに対して、天然ガスはトンあたり1080円、石油はキロリットル(=トン)あたり、2040円の税金がかけられています。しかし、温暖化防止のコストを考えれば、石炭により高い税金をかけるべき。石炭の税率を大幅に上げ、天然ガスの税率を下げれば、電力会社も天然ガスの利用を増やすかもしれません。新たに原発を増設しなくても、今ある天然ガス火力発電所を活用すれば、大幅な排出削減が期待できるでしょう」。

 石炭による火力発電は大量のCO2を排出している

 
日本の大規模排出事業所の上位は大量の石炭を使用する発電所・製鉄所がほとんど。表は気候ネットワークの調査より作成、データは2006年のもの。

■今できることをやろう

産業部門とならび、最大の温室効果ガスの排出源であるエネルギー転換部門、つまり発電のあり方を見直すこと自体は重要でしょう。しかし、本当に原発が温暖化対策になるのか?費用対効果はどうなのか?検証しなければならない点は多いようです。しかし、一方で温暖化対策は待ったなしの急務。省エネ・自然エネルギーの活用、石炭火力発電の見直しなど、今できることからやっていくことが現実的なのかもしれません。

(志葉玲)

コメント

  • 枝信一 - 2008年10月20日 23:52
    とても興味深い記事でした。 カナダから来日したある環境活動家の女性が言いました。「日本は、世界で唯一の原子力爆弾が投下された国。なのに、現在そしてこれからまだ原子力発電に頼ろうとしているのは、理解できないわ。」 そして、日本は地震大国。地雷を日本各地に埋め、ナマズが地雷を踏めば、ナマズの上に居るものすごい多くの人が死んでしまうようで。。。 自然エネルギーの活用をすることは、まさしく、自然に感謝し、自然の恩恵を得ること。そして、なにより自然をもっと知ることができる。自然との共生をして来た日本に期待しています。
  • 大野克良 - 2008年10月29日 12:09
    風力や太陽光等の自然エネルギー発電を経済政策の最重点にして、ほしい。 原子力発電は、CO2がゼロと政府も電力会社も宣伝しているが、安全な廃棄方法確立していない。いわば、ブレーキが効かない自動車を宣伝しているようなものです。大規模CO2事業所で 日本一が中電碧南火力発電所・排出量20位以内に、10発電所が入っていることを知り驚いています。聞くところによると、石炭火力は単価が安いので、何の制約もなくここ十数年で飛躍的に増えたと聞いております。電気料金の中に、原子力発電推進のための費用が、年間2千億円以上入っているとのこと。この費用を全て地球環境にやさしい自然エネルギー推進のために、使ってもらいたいと思います。 2008.10.29
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