環境都市として知られるドイツのフライブルク。中心地からの自動車締め出しをはじめ、さまざまな取り組みを実施しているフライブルクですが、今回はヴォーバンという住宅地を紹介したいと思います。
約41haに広がるヴォーバンは、斬新なコンセプトに基づいて出来たまちです。それは「車のいらないまち」というもの。本当に可能なの?できたとしても、暮らしにくいのでは?という疑問が浮かんできますが、実際のところは、すばらしい環境に囲まれた住宅地となっているようです。そんな「持続可能な住宅地」の様子をレポートします。

まず、交通システムから見ていきましょう。フライブルクの中心地からヴォーバンへは、路面電車が通っています。横長のヴォーバンを横断するように走っているので、とても便利です。この写真を見て、あれ?車があるぞ?と思われたかもしれません。実はヴォーバンは、車の乗り入れを完全に禁止しているわけではないのです。

かつてリーゼルフェルトという住宅地は、完全なカーフリーシティ、つまり車を使わないまちを目指し、住民の支持を得られずに失敗しました。その教訓を活かしてヴォーバンでは、”車に乗らなくても快適に生活できるが、乗ってもよいまち”という柔軟なコンセプトを取り入れました。住民は、マイカーを住居の近くに駐車したり、写真中央に見えるような立体駐車場を利用したりすることができます。カーシェアリングも盛んに利用されています。
ここからは、まちの様子を見ていきましょう。とにかく、緑が多いことがわかります。住宅地内の移動は、自転車が主です。写真では伝わりませんが、車が近くを走っていないために、とても静かです。どうして住宅地内で移動する必要があるのか?という疑問もあるかと思います。それは……。
住宅地内に、お店がたくさんあるからです。道路に面した住宅の一階の多くは、パン屋やカフェ、本屋などになっており、ほとんどの生活必需品を、住宅地内で揃えることができます。このため、わざわざ車で遠くまで買い物に出かける必要がありません。写真の小さなお店は、地域の憩いの場としても、有効活用されているようです。

路上に目線を移すと、いたるところに写真のような落書きがみられました。車が走っていないため、子どもの遊び場になっているのです。家の前に停まっているのは、子どもを安全に乗せて走れる自転車です。

自然エネルギーの導入も進んでいます。写真の建物は、屋根が一面のソーラーパネルになっています。建物自体にも、厳しい省エネ基準が課せられており、冬場にほとんど暖房が必要なく、そのため燃料を消費しなくてすむというパッシブソーラーハウスの導入も、意欲的に進められています。
このようなまちづくりをみると、やはりフライブルク市の行政による計画が素晴らしかったのだろう、と思いがちなのですが、そうではありません。もちろん行政の協力はあったのですが、ヴォーバンは「こんなまちをつくりたい」という住民の努力と活動によって現在の姿になったのです。
もともと兵舎として開発されたヴォーバン地区は、第二次世界大戦後はフランス軍が駐留する場所となりました。フランス軍の撤退後は、若者グループによって一部の建物が占拠されました。彼らは、地価の高いフライブルクにおける、住宅難という問題を解決しようと立ち上がったのです。 この動きを引き継ぎ、住民による協同組合組織である「フォーラム・ヴォーバン」を経て、現在も「住宅地協同組合ヴォーバン」により、住宅地運営がなされています。
また、個々の建物(共同住宅)のできるプロセスにも住民参加が深く根付いています。土地を購入したディベロッパーが共同住宅を建て、分譲するというのが一般的な住宅開発の流れです。しかしヴォーバンでは、住民同士が出会い、グループを組織し、共同で土地を購入します。そのうえで、建築家に直接依頼をして自らの理想の住宅を手に入れるという流れになっているのです。これには、ディベロッパーによる住宅開発によって発生する手数料や広告費を節約できるため、安価に仕上げることができるというメリットもあるといいます。できる限り自分たちで設計し、かつ安価に仕上げられる住宅。ぜひ日本でも普及してほしい仕組みです。
CO2の削減につながる省エネや、持続的なまちづくりと聞くと、住民が我慢をしたり、何か新たな努力をしたりといった、ややネガティブで負担の多い印象があります。ヴォーバンは、そういったイメージを覆し、より暮らしやすい住空間を求めることと、環境負荷の低減は両立可能であるということ、また、それを実現するのに大切なのは、理想をもった個人の集まりが、粘り強く活動し続けることだということを示しています。
(石川孔明)























