グッドニュース・ジャパン トップ
山のお肉屋さんに学ぶ“けものと人の共存”
(2008年7月24日 09:00)

今回から「畑と台所をつなぐ」をモットーに、中部地方を中心に有機野菜や無農薬・低農薬・無添加の食材をお届けする「にんじんCLUB」から、“がんばっている食の現場”をレポートいたします。 

■山と台所をつなぐ~遠山郷との出会い

いま、日本の農業はさまざまな問題に直面しています。後継者不足により耕す人がいなくなった農地の荒廃、安価な輸入作物の台頭、温暖化による異常気象、作物泥棒による被害、挙げだせばきりがありません。その中でも近年、山のある田舎に行くと、どこも『獣害』に悩んでいます。

サルや鹿、猪などの野生のけものたちが、エサを求めて畑や果樹園にやってくるのです。もちろんプロだろうが家庭菜園だろうがお構いなし。けものにそんなつもりはなくても、育ててきた人間にとって、収穫直前の野菜や果物を食べられてしまっては深刻な問題なのです。

そんな中、縁あって長野県飯田市にある遠山郷を訪ね、創業50年、肉屋を営なむ「肉のスズキヤ」さんと出会いました。

 carrot1-2
「肉のスズキヤ」鈴木さん(中央)と”にんじんCLUB”のスタッフ

■遠山郷ってどんな所?

遠山郷は長野県の南アルプスと伊那山地の谷合いに位置し、古くから断絶の地として知られ、独自の風土に根ざした文化が色濃く残っている地域です。国の重要無形文化財に指定されている「霜月祭り」は、映画「千と千尋の神隠し」の「日本中の神様が湯治にやってくる」というアイデアのモチーフにもなっているそうです。

そんな遠山郷の食文化の一つとして「山の肉」、つまりクマ、イノシシ、シカなどの野生のけもの肉を里人が食べ、増えすぎを防いでいた歴史があります。ちなみに、ヨーロッパでも山肉の食文化は一般的であり、狩猟した肉はフランス語でジビエと呼ばれているそうです。

■山のお肉屋さん

遠山郷・和田宿で50年間、肉屋を営む「肉のスズキヤ」では26人の腕利きの専属猟師が獲った、質のいいお肉を扱っています。社長の鈴木理(すずき・まさし)さんにお話を伺いました。 

「山肉といっても野生のものは何を食べているか分からないし、特に人里に下りてきたけものは生ゴミを食べている可能性があるから、うちでは一切売りません。うちの猟師さんたちは獲ったけものの素性がはっきりしたものを持ってくるし、内臓を処理するから、どんなえさを食べたかも聞けばだいたいわかるんです。」

畑や果樹園を荒らす「獣害」が多発している原因は、「まず単純に猟師の数が減ったことと、人間の怖さを知らないから増えたけものが人里へ来ること。犬の放し飼いが出来なくなったのも大きいです。昔は、狩猟用に訓練された犬を放し飼いにして、けものが里に下りてこないようにしていたんです。温暖化による積雪量の減少でけものが生息しやすくなったことなど、環境の変化も挙げられますね。」

そのほかにも、農村の過疎化、田畑の荒廃によりけものが生活する環境が拡大したことも原因として挙げられているようです。鈴木さんのお話を聞いてみると、獣害は私たちが招いた一種の人災でもあり、けものと人間が共存していくことの必要性をひしひしと感じました。

■鹿肉、その味は!!

遠山郷を訪ねてから数週間後の2008年6月4日、こんどは愛知県小牧市の『にんじんCLUB』事務所に鈴木理さんを迎え、鹿肉の試食&学習会を開きました。

「野生鹿肉タタキ用」を解凍し、まだ芯が冷たいうちにスライスしてそのままいただく他、表面だけさっとソテーしてレアステーキに。お刺身のようにワサビや醤油、カルパッチョ風にオイル各種や塩など様々な調味料も用意しました。

「え、鹿肉!?」「食べられるの?」「生肉はちょっと苦手なんです」……。はじめて食べる野生の鹿肉にスタッフもドキドキ。

ところが、鈴木さんの見事な包丁さばきで美しく並べられたお肉に箸をのばすと、「美味しい!!全然臭みもないし、やわらか~い」「とろっと口に広がって甘みがある!!」「いいマグロの赤身より美味しいよ」と大好評。あっという間になくなってしまいました(笑)。 

 carrot1-3

■山と台所をつなぐ

冒頭でもふれたように、近年はけものによる農作物への被害が多発しています。増えすぎたけもののバランスを取り戻すためには、経済的な循環のしくみが必要。「山と台所をつなぐ」ことが、その糸口となるのではないでしょうか?

遠山郷を『にんじんCLUB』に紹介いただいた「地元学」を提唱する吉本哲郎さんは、獣害対策として“追い上げ犬”という訓練された犬を育てる学校づくりを模索しています。まだ実現の道筋は見えていませんが、『にんじんCLUB』としては山の肉を販売した収益の一部を、こうした活動に充てていくことも考えています。

街に暮らしているとなかなか、いえ全然(!?)見えない“食べものづくり”の現場。これからも“毎日食べるもの”を通して「畑と台所をつなぐ」ニュースをお届けしてまいりますので、どうぞお楽しみに。

〈関連HP〉
・にんじんホームキッチン

にんじんCLUB 森さつき)

コメント

コメントする

(コメントは承認された方のみ表示されます)

トラックバックURL

トラックバック

MAP
 
パック納豆の上に張り付いている、薄〜いフィルム。はがすと、納豆のネバネバがあっちこっちにくっついて、ついイラッ。こんな体験はありませんか。 ...
愛・地球博のフードコートで、食器として導入されてから注目が高まった生物由来の有機資源「バイオマスプラスチック」。原料に食品廃棄物や間伐材など...
生物多様性COP10
木造都市の夜明け
G8・脱温暖化チームマイナス80
和LOHAS
マイファーム