ずっと都会暮らしだった筆者は以前から「死ぬまでに1度くらいは田植えの経験をしてみたいなぁ~」と漠然とは思っていたのですが、2008年6月28日(土)とうとうそのチャンスに恵まれたので、ご報告します。
友人のお世話で、京都府京田辺というところに「自給農法」を30年前から実践されている糸川勉さんを訪れました。糸川さんからは精悍なオーラを感じました。私も好きなことを積み重ねて、糸川さんのようにかっこよく年を重ねつつ、生きていきたいものです。

糸川勉さん
京田辺は京都府南部しかも、大阪府枚方市、奈良県生駒市の三府県の県境にある田園地帯で、JRの車窓からはどこも田植えはとっくに終わっている。「これからホントに田植えできるのかな?」と、現地到着まで不安になった。
普通は田植えは5月のゴールデンウィーク頃の風景で、6月末に田植えなんて…?これには理由があるのです。
日本の農家の大部分は兼業農家だということを思い出してください。稲は本来、熱帯の植物なので、暑さを好みます。しかし、日本では兼業農家の働き手が帰省できるのはゴールデンウィークだけということで、6月末の田植えが珍しく思えたのです。
4月下旬から5月初旬というまだ寒いうちに苗を植えるので、稲が病気になりやすい。だから農薬を使わざるをえないというわけです。
その点「糸川式農法」では、自然に逆らわず、苗が十分に育つ6月まで田植えをあえて待つ。人間とおんなじで、そこそこ大きくなれば苗も病気にかかりにくくなるので農薬がいりません。
雑草対策としても6月末の田植えは有効です。5月の田植え(一般農家)では、その後暖かくなるにつれて雑草と稲が一緒に生育してくるので、雑草だけを抜くのが大変で除草剤を使いまくる。「糸川式」では、暖かくなって雑草が生えてきた出鼻に(田植えのために)土を掘り起こすので、雑草に壊滅的な打撃を与えてから、苗を植える。だから雑草が生えにくいのです。しかも、土に返った雑草そのものが稲に更なる養分を与えてくれます。
収穫時期も一般的には、換金作物としては、早く刈って早く新米として売る方が儲かるので、さっさと刈って、乾燥機で乾かすことになるが、「糸川式」では、米の糖度を高めるために、いつまでも田んぼで稲をじっくり寝かせ、刈り取った後も一か月くらいかけて天日に干します。こうして出来た米は、抜群に美味いのだとか。
お米も野菜も(換金作物とは違う)自家消費のための完全無農薬・完全有機栽培、しかも機械は一切使わない完全手作業です。販売を目的としていないと、こんなにもつくり方が変わってくるということに驚きました。
糸川さんいわく、稲・稗・高粱・麦・トウモロコシなど人類の主食になる穀物は、本来手間がかからない植物なのに、近代に入って人口が爆発的に増え、大量生産方式を編み出してから本末転倒が始まったとか。
昼食に特製カレーライスと有機野菜サラダをご馳走になりながら「糸川式農法」の説明を受けたあと、田植えの要領(これも「糸川式オリジナル」)を教えてもらって、いよいと短パンに履き替え、水田に入ります。もちろん素足で。

水田といっても他の田んぼと比べても水量が多く、一見「気味の悪い泥沼」といった感じで「本当にここに裸足で入るの?」と聞きたい気分だったが、入ってみるとじつに気持ちいい~!水田の中にはタニシや大きなオタマジャクシなどがウヨウヨいて、たまに近所のアイガモも泳ぎに来るそうです。

一般農家の場合、冬の間は、田んぼは水を抜いてカラカラにしておくのですが、糸川さんは冬の間でも田に水を張って動植物を遊ばせておくので、まるで沼地のようになっています。これが最良の土づくりになるのです。 また畑も雑草を堆肥化させ、良質の土を最小限のコストと労力でつくっているとのことでした。
糸川さんは自家消費のためだけに米や野菜を作られているとのことですが、「究極の道楽」と笑いながらおっしゃるその目は生きる自信にあふれていました。
見るからに、かなり育ちきった立派な苗を、真っすぐに植えるのはなかなか難しかったのですが、田んぼの中での動植物と対話しながら、至福の時間はあっという間に過ぎ去りました。人間も自然界の一部!自然の生命力を五感で強烈に感じながら、「食べる」ということを深く考えさせられた1日でした。秋の収穫時にまたここを訪問することを糸川さんと約束して、京田辺の地を離れました。
(施 治安)






















