北海道洞爺湖サミットでの温暖化対策の合意骨子が2008年7月8日午後、発表されました。日本政府は「大きな成果」だと自負していますが、NGOからは「まるで不十分」と非常に厳しい声が上がっています。同日晩、地球温暖化や貧困、平和・人権に取り組む6団体が緊急記者会見を開きました。

■ 洞爺湖サミットへの失望と今後への期待
WWFインターナショナルのカトリン・グッドマン氏は「先進国の温暖化防止の取り組みは、後退したと言える内容。『2050年に少なくとも50%の温室効果ガスの削減』をうたっているが、実際には先進国は80~90%の削減が必要。前回のハイリゲンダム・サミットではなく、昨年末のバリ会議から内容を発展させるべきだったと思う」と失望を隠せない様子。中期目標の具体的数値が無かったことについても、「2020年までに温室効果ガス排出を25~40%削減すべきという、バリ会議合意を無視している」と不満を表明。一方で、「IPCCの報告書でも既に利用可能な技術があると明記されている。2050年までに、できることはたくさんある」と、取り組み次第では、炭素排出ゼロ社会の実現も可能との見解を示しました。

気候ネットワークの浅岡美恵氏は「セクター別アプローチ*1によって、『2020年には14%の排出削減できる』と福田ビジョンの中で語られているが、本来1990年である基準年を2005年にずらしたことや、森林を吸収源としていることから、実質としては4%という京都議定書の目標より低い内容」と削減量をごまかすかのような日本政府の設定を批判。また、「セクター別アプローチで(省エネ効率の情報などを)自己申告するならば、正直者が馬鹿を見ることになる。どうしてもやりたいのなら、他国の削減可能性を言い合うのはどうか」と提案しました。
米国の科学者達によるNGO「憂慮する科学者連盟」のオルデン・メイヤー氏は「失望するが驚かされる結果ではない。欧州の4カ国は科学を重視したが。他の4カ国は産業界の声を重視したということ」とコメント。「グッドニュースとしてはブッシュ大統領はあと半年で任期を終える。次の大統領はオバマであろうが、マケインであろうが、より積極的だろう。中国やインドともより一層の削減で合意できるかもしれない」とブッシュ政権以降に期待を込めました。
貧困撲滅への政策提言などで活躍する国際NGO・オックスファムのアントニオ・ヒル氏は、温暖化で特に悪影響を被る途上国での緩和や対応策について、「先進国は60億ドルを拠出するとしているが、実際には年間500~860億ドルの資金が必要だ」と指摘。「財源がODAというのもアンフェア。ただでさえ、『先進国はGNPの0.7%をODAに費やす』という貧困撲滅のためのミレニアム開発目標*2での約束が守られていないのに、さらに貧困対策の資金を奪うのは容認できない」と批判しました。また、原油など化石燃料の価格上昇や、資源量の低減については、「状況を変えるチャンスと言えるかもしれない。各国は化石燃料への補助金を廃止し、これらのお金を自然エネルギーの普及に使うことが重要だ」と語りました。
■「原発は温暖化対策ではない!」

この記者会見に続き、グリーンピース・ジャパンとピースボートも合同記者会見を行い、「温暖化対策として原子力を推進していく」という骨子に関し、異論を唱えました。グリーンピース・ジャパンの鈴木真奈美氏は「国内で原発を新たに建設することができないため、日本や米国、フランスは国外に輸出することで、原子力産業の生き残りを図っている。だが、地球温暖化を防ぐには、700基の原発を10~15年内に建設・稼動させる必要があり、まったく現実的ではない。それならば、自然エネルギーにお金をつかった方が良い」と指摘しました。
ピースボートの川崎哲氏は、「原発の輸出は、『平和的な原子力開発』であっても、濃縮や再処理は核兵器開発に直結する技術だから規制していこうという北朝鮮やイランに対する姿勢と矛盾する。管理をしっかりすればいいと言うが、例えばアメリカはインドと協定を結び、核不拡散条約ではありえないような甘い管理体制を許している」と、原発輸出によって核拡散が進むことを懸念しました。
*1 各産業ごとの自主削減目標を積み上げて、全体の温室効果ガス排出量を減らすというもの。しかし、排出総量を削減するのではなく、生産単位の省エネ効率を高めるという仕組み上、生産が増えれば、結果的に排出総量が増えてしまうという欠点がある。
*2 2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで合意された国際的な公約で、2015年までに極度の貧困にあえぐ人々の割合を半減させるというもの。
(志葉 玲)






















