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生物多様性とは―公開シンポジウム「名古屋COP10に向けて」レポート(その1)
(2008年7月9日 09:00)

生物多様性JAPAN主催の「公開シンポジウム:名古屋COP10に向けて-生物多様性を考える」が2008年7月5日(土)、名古屋市金山の名古屋都市センター大研修室にて行われた。このシンポジウムは、第1セッション「生物多様性とは」、第2セッション「生物多様性に何が起こっているか」、第3セッション「名古屋COP10へ向けて」に分けられており、この記事では第1セッション「生物多様性とは」について報告する。第2・第3セッションについては、報告記事「その2」・「その3」をご覧いただきたい。

まず、シンポジウムの開催にあたり、生物多様性JAPAN代表の岩槻邦男さんから挨拶があった。岩槻さんは「生物多様性をとりまく問題は、気候変動の問題ほど注目されていない。気候変動については人間が技術を駆使することで何とかなる部分もあるが、生物多様性は人間の技術を用いてもどうにもできないことが多い。もっと多くの人々に、気候変動と同じくらい、生物多様性やCOP10に注目してほしい」と語った。

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 生物多様性JAPAN代表 岩槻邦男さん

その後、第1セッション「生物多様性とは」が始まった。生物多様性JAPAN事務局長の中央大学教授、西田治文さんは「恐竜時代から考える現在の生物多様性」と題して、地球上の生物が生きてきた長い歴史を見直すという視点から、現代の生物多様性保全の重要性について述べた。西田さんは「地球は無生物の時代から何十億年もかけて生物多様性を培ってきた。21~19億年前にはバクテリアや藻類など初期の光合成をする生物が二酸化炭素の多い大気に酸素をもたらし、約10億年前には酸素の量が二酸化炭素の量よりも多くなった。約5億年前には、酸素が濃くなったために多細胞生物が多様化し、徐々に陸上の生態系が形成されていった」と述べ、地球上の生物の発展と酸素の関係を示した。

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 生物多様性JAPAN事務局長 西田治文さん

また、西田さんは地球上の生態系を支える植物の重要性を指摘した。「約5億年前には植物が陸に上がり、約4億年前には初期の森林がつくられていった。1億5千万年前を境に、これまでシダ植物や裸子植物ばかりであった環境が変化し、被子植物が出現した。このことは地球上の生物多様性の発展に大きく貢献し、昆虫やほ乳類が被子植物の花粉や種子の運び役となって被子植物が栄えたばかりでなく、昆虫やほ乳類自体の多様化と発展にもつながった」と、現代にもつながる生物多様性を促進した共生の関係を指摘した。

さらに、生物多様性の保全という視点から、地球上の生物が今までに経験した種の絶滅について、「恐竜は白亜紀の終わりに絶滅し、この時、地球上の生物多様性の度合いは低くなった。しかし、その後多様性は回復し、現代まで右肩上がりに高まってきた」と述べ、地球や自然が持つ回復力を示唆した。「しかし、恐竜が絶滅してから生物多様性が復元されるまでには約100万年の長い時間がかかった。このことを考えると、生物多様性の保全は自然に任せておけば良いとは言えない」と、私たちも生物多様性保全のために成長型経済からの脱却、国際的連携、教育など、できることをしていかなければならないと締めくくった。

次に、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科教授の石井実さんが「昆虫からみた日本の生物多様性」と題して、昆虫と日本の里山の関係や外来種をとりまく問題について語った。石井さんは「日本の昆虫は約3万2千種が知られているが、実は約10万種いるとも言われている。日本固有の種も多いが、生息場所の破壊や外来種の影響、気候変動などによって、現在では多様性が低下している」と、日本の昆虫がおかれている状況を説明した。

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 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科教授 石井実さん

また、石井さんは、環境省が作成している「日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック」に掲載される種が年々増えてきているということにも言及し「レッドデータブックに掲載されている生物の多くが、日本固有の種かアジア地域のみにしか生息しない種である。さらに、そのような昆虫の中には、非常に限定された環境下でしか生息できないものも多く、それらの生息地が人間の活動によって破壊されると生態系に大きな影響を与えてしまう」と述べ、ヤンバルテナガコガネなどの例をあげた。

さらに、石井さんは日本の里山に関して「日本古来の里山に生息していた種が今では危機的状況に瀕している。かつて、里山は間伐や下草刈りなどが行われ人の手によって守られてきたが、今では里山が開発の対象となって破壊されたり、放置されて森林化したりしている。このため、生態系が変化し、種の多様性が失われてきている」と述べ、改めて里山の重要性を強調した。

そして、海外から入ってきた種が日本固有の種や生態系そのものを駆逐する外来種の問題についても紹介。外来のアリやクワガタを例として取り上げ「放浪アリ類と言われるアカカミアリやアルゼンチンアリは、日本のアリを駆逐して分布が拡大している。また、カブトムシやクワガタなどは輸入がさかんになっているため、日本のヒラタクワガタと外国産のクワガタとの混血の個体も見つかっている」と、深刻な状況を語った。

石井さんは、最後に「生態系を機械にたとえると、昆虫はその中でビスのような役割を果たしている。たくさんいるけれど、とても大切な存在。このビスがとれたり緩んだりしてしまったら、生態系全体に影響を与えてしまう」と締めくくった。

このシンポジウムの第1セッションでは、西田さんのお話を聞いて地球の長い歴史を振り返りながら現代の生物多様性について考えたり、石井さんのお話を聞いて昆虫という視点から生物多様性を見直すことができた。参加者はCOP10に向けて生物多様性を考える際に不可欠な視点を得ることができたに違いない。

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 会場に集った参加者たち

(新倉春美)

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