
インタビューに答える星川事務局長
環境NGO「グリーンピース・ジャパン」が、調査捕鯨船・日新丸の船員らが自宅へ送ったクジラ肉を、「組織的な横領の証拠物件」として運送会社の倉庫から持ち出した事件は、同団体のメンバー2人が2008年6月20日、「窃盗」「不法侵入」の容疑で逮捕されるという展開となりました。逮捕を受け、マスメディアでの報道でもグリーンピースへの批判的な論調が目立つようになり、ネット上では激しい批難の声があがっています。しかし、単に同団体をバッシングするだけではなく、もう一度この事件の意味を問い直してみる必要もあるのではないでしょうか。渦中のグリーンピース・ジャパン星川淳事務局長に、グッドニュース・ジャパンの志葉玲記者が単独インタビューしました。
――なぜ、倉庫からクジラ肉を無断で持ち出したのですか?
佐藤(クジラ肉を持ち出したスタッフ)は、当初、箱の中身を確認してから元に戻すというつもりだったのですが、開けてみて、やはりこの問題を暴く上でなくてはならない証拠品だと判断し、確保した*。私にも事後承諾だったのですが、最終的には了承しました。
*グリーンピース側は、証拠品のクジラ肉を「確保」したあと、正式な手続きにしたがって東京地方検察庁に告発し、受理されたし、警察にも呼び出しがあればいつでも自ら出頭し、捜査に協力すると連絡していた、と主張。また、「窃盗」として違法行為の場合、「盗んだものを所有、もしくは転売、配布するなどの意図」が伴うもので、検察に証拠品として提供した今回のケースは、厳密に言えば「窃盗」としての要素を満たしていない、とも主張している。これに対し、警視庁や青森県警は、あくまで違法行為と見なし、今回の逮捕にいたった。
――しかし、問題のクジラ肉について、水産庁などは『横領』ではなく『お土産』だと主張していますが?
水産庁の説明は、二転三転と変わっています。我々の告発レポートにも書いていますが、当初、日新丸の船員がお土産として、クジラ肉を自宅に配送していたことを明確に否定していました。ところが、『2キロはお土産にしている』とか『10キロまではOK』などと言うことが変わってきた。しかも今回、証拠品として佐藤らが確保したのは、畝須(うねす)という高い値で売れる部分であり、水産庁が説明する慣例でのお土産で持ち帰る肉とは別の部位です。我々に情報を寄せた内部告発者も、『多分、お土産だと切り抜けようとするだろうが、横領されている肉は全く別物』と話していました。
――全体の何キロくらいのクジラ肉が船員によって持ち出されているのですか?
今回、佐藤達が確保したクジラ肉は23.5キロの畝須。確認できた伝票は合計33枚、運ばれた荷物は最低93箱に及びます。内部告発者によれば、一人当たり少なくとも数十キロ、多い時は200~300キロもの畝須が横領されていたとのこと。総額では数千万円単位の横領ということになりますね。
――確かに『お土産』というには、量も額も大きいですね……。
そもそも、日本が行っている捕鯨は、あくまで科学的な調査のためというのが名目です。そうした科学的サンプルが、捕鯨関係者によって個人的に持ち帰られているということ自体がおかしい。本来は、きちんと調査をした後、市場に卸されるべきもの* です。しかも、調査捕鯨には毎年5億円、過去20年間で100億円もの税金も使われています。ですから、今回の横領は納税者に対しての不義理でもあります。さらには、横領された肉を売買した利益は闇の金ですから、脱税の疑いも出てくる。水産庁の監督責任は重大です。
* 調査捕鯨で捕殺されたクジラ肉は調査後に市場に売られ、その売上金が調査捕鯨の主な資金源となっている。

グリーンピース事務局への家宅捜索と、それを取材する報道関係者
――それでは、なぜ日新丸側の行為は「横領」とされず、不起訴になったのですか?
わかりません。ただ当初、東京地検の担当者はこの問題の追及に非常に熱心で、何度も私達とコンタクトを取ってきました。ところが、マスコミで急に『不起訴だ』ということが言われ始めた。警視庁担当の現場の記者達も把握していなかったのに、です。弁護士を通じて確認したのですが、その時の返答は『調査中』。ですから、誤報かなと思っていたのですが、やはり不起訴となった。非常に奇妙な流れです。何らかの政治的圧力*があったのかもしれません。
*国会議員には、自民党捕鯨議連をはじめ、与野党で200人以上の捕鯨推進派の議員がいる。
――今回はグリーンピースの活動手法ばかりが論議され、調査捕鯨での横領疑惑はうやむやになってしまった感がありますね。
それは認めます。この間、私達への批判も多く受け止めてきました。ただ、今回の横領疑惑もそうですし、市場に卸されるクジラ肉の安全性の問題など、調査捕鯨にはあまりに不透明な部分が多い。内部告発者の話によれば、捕殺されたクジラには、肝臓などに腫瘍ができたものが少なくないそうですが、それらのクジラの肉も消費者に何も知らせず、売られている。日新丸の乗組員は、船の中でのことを口外しないと念書を書かされる、という情報もあります。いずれにしても、調査捕鯨はもっと風通しを良くしなければいけません。
◆グッドニュース・ジャパンとしての考え方今回のインタビューを掲載するに当たってのグッドニュース・ジャパンとしての考え方をご説明します。私たちが、バッドニュースではなくグッドニュースを伝えようとしているのは、社会を変えていくのに具体的に役立つ情報を提供したいからです。その目的はあくまで持続可能な社会の創造です。そして、社会の風通しをよくしていくことは、持続可能な社会をつくる際の大切な条件の一つです。いたずらに対立するのではなく、すべての関係者が事実を明らかにして解決策を見いだしていくことこそ、成熟した社会の証ではないでしょうか。
星川事務局長のインタビューを掲載するのは、今回の出来事について、できるだけ正確な情報を提供することが、調査捕鯨の問題について前向きな議論をしていくために役立つと判断したからです。
この問題に限らず、グッドニュース・ジャパンとしては、これからも、問題の本質は何かを考えながらニュースの発信をしていきたいと思っています。
(グッドニュース・ジャパン編集長 安在尚人)






















