化石燃料に変わる代替エネルギーの一つとして、注目が集まるバイオマスエネルギー。その先駆的企業や、アグリビジネス関連の技術を持つ企業などによる研究発表会が、NPOバイオものづくり中部の主催により2008年6月20日、名古屋大学インキュベーション施設で開かれました。
バイオマスとは直訳すると”生物量”。一般的には、家畜の排泄物や生ゴミ、木くずなどの動植物から生まれた再生可能な有機性資源のことをいいます。地球温暖化の防止、循環型社会の形成、戦略的な産業の育成、農山漁村の活性化などの観点から「バイオマス・ニッポン総合戦略」が2002年に閣議決定されたのを受けて、全国各地でバイオマス発電の取り組みが加速度的に広がっています。
今回、自社の取り組みを紹介したのは、テスコ株式会社、前沢工業株式会社、中外炉工業株式会社の3社。テスコの末廣恒夫さんは「地産地消のエネルギー・バイオガス」と題し、家畜排泄物や生ごみ、食品残渣(ざんさ)、汚泥などの有機系廃棄物から、天然ガスと同等のエネルギーを持つバイオガス(商品名:b.gasu ビーガス)製造の過程と技術を紹介しました。
バイオガスは、技術的には、古くからある発酵メタンガスの製造技術を進化させたものといいます。例えば愛知県田原市の乳牛・肉牛・豚を合わせた家畜の総排泄量は一日あたり約1400トン。これで作られたバイオガスで、田原市の全家庭のガスエネルギーを賄うことが可能になるそうです。余剰堆肥の処理に困っていた農家の収入にもなり、原料がそのまま地域のエネルギーに。数字上の模擬実験とはいえ、まさに地産地消、循環型のエネルギーといえます。他社との連携により、コスト面などさまざまな課題を解決し、一刻も早い普及に向けた実用化の研究が続けられています。
前沢工業の青木仁志さんも同様に、自社の取り組みで、バイオガス燃料化実証実験を紹介。小型で場所をとらないVPSA(真空/圧力スイング式吸着)ガス精製装置を使用することで、二酸化炭素や硫化水素などの不純物を一度に除去し、精製バイオガスを作り出すことが可能になったといいます。同社は他企業と共同研究企業体を組織し、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助を受けて、「地域バイオマス熱利用フィールドテスト事業」を鹿児島県垂水市で行っています。垂水市の養豚生産組合やガス組合などの研究協力企業と連携して作り出されたバイオガスは、「道の駅たるみず」で、ガスエネルギーとして利用されています。
両社ともに、バイオガスが現状の都市ガスなどに変わり、一般市場に普及するための課題を次のように挙げています。▽ガスの搬送コストの削減(現時点で、ガスの売値の約4割を占めている)▽排出される消化液の活用法(窒素の除去を完璧にすることが必要)▽法令の整備(コンビナートなど大規模設備を対象とした高圧ガス保安法でなく、消費者保護の観点も入れた小規模プラントのためのガス法の新設が急務)などです。
工業炉メーカーである中外炉工業株式会社の笹内謙一さんは、「バイオマスは大気中の二酸化炭素を増加させないエネルギー資源として非常に有望」と語り、廃棄物型でなく、草本系バイオマスを原料とした自社の取り組みを紹介しました。
同社は2003年にNEDOの「バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業」の補助を受け、日本初の本格的な森林バイオマスガス化発電設備を山口県に設置、ロータリーキルン式のガス化炉による実証を開始しました。この実証試験の結果を元に、熊本県阿蘇市では、阿蘇山麓に自生するススキを主とする草本系バイオマスを原料として発電を行い、隣接する市の温水プールや温泉施設にエネルギーを供給。また山口県岩国市では、県内の間伐材チップを原料として発電し、隣接する老人保健施設に電気と熱を供給しています。森林バイオマスの燃料化に関する今後の課題のひとつとして、安価で安定した原料供給システムの確立を挙げています。
2010年のCOP10の開催に向けて、「持続可能な社会を実現するためには、生物多様性の保全が必要である」という大きなスローガンが掲げられています。食物原料でなく、家畜の排泄物や生ゴミ、木くずが、人間社会が必要とするエネルギーに成り代わるなら、持続可能な社会という言葉も、現実味を帯びて聞こえてきそうです。
名古屋市の「東山動植物園・再生計画」の取材において、動物の糞の引き取り先を探しているという話を耳にしました。この糞をバイオガスにして園内のガスエネルギーとし、消化液は植物に活用して、循環型動植物園のモデルにできたら、という発想も浮かんできます。子どもたちの環境教育にもいい材料になるのではないでしょうか。バイオマスエネルギーのお話に、目の前が明るくなった気がしました。
(浜村良子)























