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生物多様性の保全に向けての市民戦略を考える―その1
(2008年6月11日 09:00)

2010年に愛知・名古屋での開催が決定したCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)で、市民の代表であるNGOやNPOは果たして発言の場が与えられるのか?また生物多様性条約とは拘束力を伴うものなのか?などを話し合うシンポジウムが2008年6月8日(日)に名古屋市東区の愛知大学車道校舎で開催された。

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「生物多様性の保全に向けての市民戦略を考える」と題したシンポジウムを主催したのは中部の環境を考える会

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杉本正次さん

はじめに、中部地域の市民団体の代表者3名が状況を報告。地域国際活動研究センター事務局長の杉本正次さんは「COP10に向けての市民・NGOの役割」の中で、NGOの参加が『国益』中心主義から『地球益』への誘導を可能にすると語り、COP10に向けた国内NGOのネットワークをつくり専門性をもった市民として草の根からの意見や考え方を本会議で提示したいと意欲を示す。

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 今村和志さん

 NPO法人表浜ネットワーク理事の今村和志さんはウミガメの放流会の問題点と新たな取り組みを紹介しながら、行政、地元の企業や学校と連携した「表浜地域の養浜活動」を報告。

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市野和夫さん

六条潟と三河湾を守る会の市野和夫さんは、伊勢・三河湾流域における生物多様性保全の取り組みの現状を報告し、「行政は今まで自然改造の旗振り役をしてきた。今後行政は財政面を支援し、NGOが中心になって生物多様性の保全を進めていく心構えが大切」と語った。

また特別報告のために北海道から招かれた日本環境法律家連盟理事で、ナチュラリスト・ローヤーの市川守弘さんは「森林破壊の現場から多様性条約の生かし方を提言する」と題し、弁護士として自然破壊を食い止めることに成功した事例を紹介。生物多様性条約の拘束力を、国内法と関連付けて解説した。

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市川守弘さん

すさまじい森林破壊が行われている北海道の大雪山の国立公園、えりもの保安林、上ノ国の国有林、そして沖縄県「やんばるの森」の亜熱帯林。スクリーンに映し出されるのは、伐採斜面と土砂が沢に流れ込む様子や斜面全体が伐採された跡地、国有林の違法伐採の現状やノグチゲラが営巣している中で継続される工事……。これらは一般の人がほとんど目に触れることのない、森の奥深く分け入った地で行われており「わからないところで、何をやっているかわからない」と市川さんは語気を強める。

では、「生物多様性条約」で、これらの無謀な開発を規制することはできないのか?国内法は生物多様性にとって無力であると市川さんは指摘する。環境影響評価法は対象が限定されており、自然公園法は風景維持のための法律で、土地所有権が林野庁にある。種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)も指定種が100種に満たず、「捕獲、採取、殺傷、損傷」においての損傷は植物に限定されている。なるほど、こういう事実を知ると、これらの法律で生物多様性を守りきることは難しいということが、素人でも理解できる。

市川さん曰く、「日本政府は生物多様性条約を、なんら拘束力を持たない宣言、いわゆる『政治的宣言』と位置づけている。生物多様性の保全は行政政策でしかないとすることによって、自由に多様性を破壊できる」「環境省の国家戦略も単なる宣言、指針でしかない」と。

一方で、オーストラリアの最高裁がタスマニア島の問題で世界遺産条約について示した見解を画期的と評する。「世界遺産条約4条と5条は、世界遺産地域の保存のために適切な手段をとるべき国際的義務を課している」「条約を単なる意思の表明(=宣言)と読まれるべきではない」とし、「この条文は各国に対し各項に記載される事柄について実施すべく努力することを『命じる形』で表現されている。実際にもし義務を課していないとすれば『可能な限り』『各国に適切方法で』という言葉は何の意味も有しなくなる」という解釈である。

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北海道でナキウサギの保護活動に取り組み、森林破壊の現状を訴える市川利美さん

日本ではCOP10開催が決定したことにより、生物多様性という言葉を初めて知った人も多いだろうし、多くの国民にとっては未だ耳慣れない言葉であり概念だろう。そのような状況の中、たとえ『努力目標』だとしてもようやく日本政府が本気で生物多様性に取り組まざるを得ない時代が来たのだといえる。

市川さんの言う「わからないところで為される暴挙」という現実に対し、蟻がゾウに立ち向かうのを覚悟で一地球市民として行政に暴挙の是正を求めるには、法はとても有効な存在だ。

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縦割り行政のひずみを、生物多様性の『つながりの心』が一瞬でも是正できないものか。日本を愛する一人として生物多様性条約が大きな力を持つことを心から願わずにはいられない。

2年後には何万という世界の眼が日本に注がれる。

 (浜村良子)

*尚、《その2》ではドイツ・ボンで行われたCOP9に赴いたNGOメンバーたちの感想をお届けします。

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