丸美産業株式会社と言えば、テレビコマーシャルを流している分譲マンションや分譲住宅の大手。その社長である嶺木昌行さんは、経営者というよりも学者のような方でした。
[嶺木昌行さん]
「なぜ、木造の本社ビルを建てられるのでしょうか?」という質問から入ったら、「その前に・・・、私は世界遺産のような古い歴史や建造物が好きなのです。文明史観から言うと・・・」と語り始めました。お答えは何と文明史観から始まったのです。
「後世の人間から見たら、20世紀は地球の循環を破壊して文明を築いた最初の世紀だったのではないか?と思うでしょう。G7・G8は経済成長政策だけを議論しています。もう、先進国の皆が成長をあきらめなければならない時代に来ているのに。バーチャルマネーを動かすような第四次産業は“花”かもしれないが、農業・林業のような“根”である第一次産業を見直さねばならないのです。以上の前提の下で、丸美は何ができるのか? わたしは常日頃、社員に対して1億2千万人分の1人、60億人分の1人としての義務を果たしなさいと言っています。そのひとつの答えとして、本社を木造ビルで建てようと考えました」とおっしゃいました。
それにしても、なぜ都心で木造ビルを?とお聞きしたら、「先々代から木材会社だったので、国産材に対するこだわりがありました。耐震の問題もあり本社ビルを建て直そうと思っていた時に木造都市を提唱しておられる京都大学教授の高松伸さんと知り合い、決心しました。高松さんは『木造住宅ではなく、木造村(都市)を作るべきだ』と言われました。国産材のビルを建てる。鉄筋コンクリートのビルよりも4~5割も高いのですが、耐久性があるので採算が合います。例えば、柱が1本だめになってもそれを取り替えればよい。理論的には永久に持つのです。それに、木材とH鋼を構造材とする『木質ハイブリッド構法』は建築基準法をクリアしていますから」と明快に答えられました。
建設中の本社ビル(西側ハイブリッド正面図):丸美産業提供
新社屋完成予想図(北東面・2008年7月完成予定):丸美産業提供
「木造都市は可能ですか?」と質問には、「私は、コミュニテーは縦ではなく横だと思っています。木造は超高層の立体都市には向かないかもしれないが、中・低層がよいのです。夢ですが、日本の人口が減少するので、21世紀の村(コミュニティー)づくりをしたいと思っています。ですから、答えは『イエス』です」と。
そして、最後に「経済の語源は“経世済民”です。これを私は中学・高校時代に学びました。日本人は元々高い精神性を持っていたはずです。自らを律する倫理があるので、それを取り戻せばきっと生き残れると思います」と熱く語ってくださいました。
丸美産業には「丸美の社是」のほかに「丸美の倫理」があります。5項目あり、その2には「資源や環境は宇宙や地球から与えられるものであり、これは全人類のみならず、後世世代、全動植物に公平に与えられるものである。決して私物化してはならない」と書かれています。企業家が書ける言葉ではないと感動しました。
(聞き手:町田慈子/構成・写真:伊藤剛)




















